鹿島美術研究 年報第18号別冊(2001)
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20)。修道院(Reg.-Bez. Oberfranken, Lkr. Coburg) (図22-27)やゼーリゲンポルテン修道院〔図28-36)に見られる3径間分の延長部を持つ長後陣に発展してゆくのである(注ここでは身廊と内陣の接合部に注目し,二つのタイプを区別しておきたい。ゾンネフェルト修道院では,内陣アーチ壁面によって,身廊と内陣は明らかに隔てられている。この点は祭壇から身廊を見る際,この方向からもアーチ壁面がはっきりと認められることに明らかである〔図24)。内障のリブ付き寄窪天井のシステムは,この壁面で途切れてしまっている。一方ゼーリゲンポルテン修道院の場合,リブ付き寄薩天井のシステムは,内陣アーチの所でその断面を見せて終わる〔図32)。前者は内障が身廊から半ば閉ざされ独立した空間を構成するのに対し,後者は内障が身廊に聞かれているという違いが生ずる。それはまた身廊から内障を眺める者に,まったく異なった印象を与えることになる。半ば閉ざされた内陣の場合,そこに席を占める聖職者たちが俗人とは区別される地位にあることを想起させ,祭壇で執り行われる秘蹟に,より秘められた感じを与えるだろう。一方聞かれた内陣からは,そこに満ち溢れる光が身廊へと流れ込む。ドンナレジーナ聖堂で柱とアーチのシステムは,より古典的でより精巧であり,半円柱の上に置かれた柱頭から割型の施された横断アーチが堂々と立ち上がる。プロポーションは縦長ながら,まさに凱旋門アーチと呼ぶに相応しい壁体を作り上げているが,建築類型としては聞かれた内障の形式を備えている。従って修道女席からもその明るさは印象深く観察され,十分な広さを持った壁面に描かれる「天使の位階jは,内陣の光を直接見つめている。ここでは絵画の図像が,建築の生み出す効果を適切に踏まえた上で配置されているのである。3 歴史的背景に関する若干の考察これまでドンナレジーナ聖堂の建築に見られるドイツ的な要素を指摘してきた。それはまた,絵画の図像を解釈する上で、重要な意味を持つと考えたからでもある。しかしドイツの作例と完全に一致するわけではない。後陣を外側で支える扶壁は,アルプス以北で一般的な階段状扶壁となっておらず,窓下の高さを蛇腹が水平に走り建物全体を締めている点も含め,ラクイラのサン・ドメニコ聖堂やルチェーラの大聖堂など,アブルツツォ地方やプーリア地方の聖堂を思い起こさせる。内陣の寄蔭天井を支-459-

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