鹿島美術研究 年報第18号別冊(2001)
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が24点(美術館の所蔵が2点,他は画廊・個人の所蔵)あることが判明した。その内は,1960 (昭和35)年に,タピエの紹介でニューヨークのマーサ・ジャクソン画廊と契約した同じく「具体」の元永定正の契約内容が,毎月大・小2点の作品を送るものであったことと比べても明らかであろう(注2)。さらには,前述したパリやトリノでの個展の出品作も展覧会終了後海外に残されたし,1962 (昭和37)年に大阪のグタイ・ピナコテカで聞かれた白髪の個展に出品された17点の作品も展覧会終了後すべてスタドラー画廊に送られたというから,白髪一雄の作品は,海外に流出した「具体」の絵画作品のなかでも,もっとも点数が多かったにちがいない。白髪は,かつてあるインタピューで,契約した最初の年はすでに完成していたものも含め題名の付いていない作品(1具体」のリーダ一吉原治良は,当時作品に余計なイメージを付加することを嫌い,作家たちに題名を付けることを厳しく禁じていた)を決められた枚数送ったが,2年目からは点数が多くなり作品を識別することが困難になったので,後に自分が思い出すためだけの題ならよかろうと『水誹伝』に登場する豪傑の名を付け始めたと語っている(注3)。白髪の画業を代表することになるいわゆる「水誹伝シリーズ」の誕生の由来である。周知のように『水詳伝Jには108人の豪傑が登場するが,そのうち「地耗星白日鼠」と[地賊星鼓上宅」は罪人であることから題名にしなかったとされるので,豪傑の名を戴く計106点の作品が制作されたと考えられる。今回,作者の協力のもと,様々な資料を猟渉して,これら「水誹伝シリーズjの現所在をひとつひとつ確認した結果,106点のうち現在海外で所蔵されているもの訳は以下の通りである。「天捷星没羽箭J(1960年,油彩・カンヴァス,182. OX273. Ocm,個人蔵,パリ)「天速星神行太保J(1960年,油彩・カンヴァス,約180号,個人蔵,ミラノ)「天退星挿麹虎J(1960年,油彩・カンヴァス,182. OX273. Ocm,個人蔵,ジュネーヴ)「天剣星立地太歳J(1959年,油彩・カンヴァス,182. OX273. Ocm,カンティーニ美術館蔵)「天平星船火児J(1960年,油彩・カンヴァス,182.0 X 273. Ocm,個人蔵,パリ)「天牢星病関索J(1962年,油彩・カンヴァス,180.0 X 280. Ocm,ゲオルグ・ノートヘルファー画廊蔵,ベルリン)「地雄星井木粁J(1961年,油彩・カンヴアス,130. OX 195. Ocm,個人蔵,パリ)588

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