0055-0056} (2000年)C図2J。もうlつの世界標準時を想定するこの作品は,1945年8月6日に広島に原子爆弾が投下されたことが契機となっている。作家は,原爆投下ハノーパー市中心部の繁華街はレストランやショッピングのための庖舗が集まる所である。ここでは9人のパフォーマンスや立体作品が展示された。(なお,ベルベル・カスベレク,フリヌア・ハルソン,ダニエラ・フッセルなど,複数の作品やパフォーマンスを展示した作家がいるので,延べ作家数は合計で19人を上回ることになる。)ここでもコンセプチュアルなf頃向のイ乍品ばかりであった。その中から原仲裕三の作品を紹介したい。作品名は{Anoth巴rWorld's St加dardTim巴の日を紀元1年1月1日とする独自の世界標準時IHiroshimaTimeJを作っている。この標準時でいくと,今年の8月5日は原爆投下から満55年になり,翌8月6日は56年目の第一日,つまりIHiroshima Tim巴Jの元旦となる。作品は今年の6月18日にこの展覧会IBaLANCE2000Jが始まってから,8月6日をはさんで10月31日まで展示されるので,作品のタイトルに10055-0056Jがつけられているのである。この作品はハノーパーで調達された白い石のブロックを三方に積み上げ,前面と上の部分を透明なガラス板でおおい,そこにわずかに隙聞を設ける外形となっている。実はこの隙聞から郵便物が投げ入れられることになっていて,これはつまり石とガラスでできた大きな郵便受けなのである。何が届けられているのかというと,広島の地方紙である中国新聞社の朝刊と,彼の知人で広島在住の被爆者である本田志津子さんの日々の思いを書いた葉書が毎日届けられるのである。作家はあらかじめ中国新聞社や本田さんの協力を取りつけこれを実施に持ちこんだが,現在ではなお,8月6日に何を考えどのような行動をしたかを葉書に書いて送るプロジェクトを実行に移しており,より多くの市民たちにこのプロジェクトへの参加を呼び掛けている。ハノーパーの郵便当局もこの作品のコンセプトとプロジェクトを理解し,配達などの協力をしている。つまり郵便物が届けられるということは,この作品のタイトルが一つの住所として登録されたことを意味しており,行政をも巻き込んだパブリックアートとなっている。そしてこの作品には日本の毎日のニュース,つまり政治,経済,社会,文化,科学,芸術などの諸分野の動きが日々届けられ伝えられることになる。作家がこだわる8月6日の原爆の日を挟む展覧会の会期中の,広島や世界の物事の動きがここに集まり何かを伝える。また,本田さんをはじめとする被爆者や他の市民たちの思いが,毎日の626
元のページ ../index.html#636