4.竜耳双胴瓶の位置づけ3.鶏首査の竜耳瓶への接近めぐらし,肩にループ状耳と雄鶏首を付け,倒卵形胴部の肩と,中位を下がった位置に2条の圏線がはいり,腰附近をしぼり,外反して平底にいたる。竜柄は竜耳瓶のものと類似しているが珠文を付けない。細かい氷裂文のある白紬は腰附近までかけられ,無柚の底部の胎土は白色である(器高26.5cm)。陪代の好例として,山西・梅淵墓〔開皇15年(595))出土の青査竜柄壷(器高45.6cm)のように,ループ状縦耳をつけ,倒卵形の胴部,頚部に2条の弦紋をいれ,珠文のない竜柄を付け鶏首査の形をとりながら鶏頭を略したものが現われている。同様な青査無鶏首壷は,安徽・陪墓からも出土し,寿州窯産品と報告されている。こうした鶏頭の省略,頚部に2本ほどの太い弦紋を強調してめぐらす例の出現,および竜柄の背部に珠文が出現することは,竜耳瓶の誕生に看過できない変化である。山東・泰安旧県惰墓出土例は,醇j侯をつけた青姿竜把手瓶であるが,従来見られなかった3個の珠文を竜柄背面に貼付し,頚部弦文とあわせて自室竜耳瓶の特徴に近づいている。鶏首壷はその後も続いてつくられ,さらに降って三彩品にもみられ,アシュモレアン美術館,ハンブルグ美術館などのように,小型化し,変形した鶏首に表れているように,既に造形的意欲を欠いた遺制としての存在にすぎないようである。以上のように,鶏首壷が陪代にはいると,胴部形態を倒卵形にし,頚部に弦文をめぐらし,一部ではあるが竜柄に珠丈を貼付するものが出現しており,これらが竜耳瓶の構成要素を形成していることに注意しておきたい。さらに李静訓墓に白査鶏首壷をみる他に,白査の資料を見出せないことは重要な事実であり,白査竜耳瓶の出現の契機の鍵が秘められているようにおもえる。鶏首査とならんで竜耳瓶出現の鍵を握るとおもわれるのは,竜耳双胴瓶(双把双身壷)である。管見では李静訓墓,天津市芸術博物館蔵など7例をあげられる。これらに共通する特徴は,胴部が倒卵形であるが,裾の部分を強くしぼり,そして聞く形態であり,これは李静訓墓出土の自室鶏首壷とよく類似している。鶏首壷から鶏首と耳を取り除いて接合した形態であり,盤口・竜柄・頚部・胴部などの特徴は白姿鶏首査56
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