ア,マケドニアおよびトラキアに重点が置かれた。日本の古代文化においても,特に古墳時代には比較の対象となりうる現象が見られる。格別の注目を集めたのは,主にタルクイニア出土のエトルリア葬祭絵画の19世紀前半に制作された透写図や模写画である。日本では今回初めて公開されたこれらの作品はローマのドイツ考古学研究所古文書資料室から出展された。展覧会の準備,あるいはカタログの執筆に積極的に協力してきた外国人研究者と,日本の専門家および学生たちとの接触や意見交換は,総合研究博物館における各講演会の前後にももうけられた機会のみならず,東京大学,早稲田大学,同志社大学における研究集会や講演会などでも盛んに行われた。信楽のMIHOMUSEUMなど,博物館/美術館を訪問した際にも日本の研究者達との接触が深められた。今回のテーマはある意味では,やはり鹿島美術財団の援助を得て,1999年4月に東京大学で開催された国際シンポジウム“ヘレニズム絵画ーその特色と意義,問題性,展望"ともに深い関連をもっO同シンポジウムにおいては,古代地中海文化圏の様々な地域出土の葬祭絵画多数についても盛んな論議が展開されたからである。この,学術的に実り豊かな成果をもたらしたシンポジウムの論集は,2001/2002年をめどに刊行が予定されている。この考古学セミナーと展覧会は,日本において,古代地中海諸文化の特に埋葬習慣や宗教観などについての関心を一層高めると同時にその問題性を深く掘り下げるなど,大きく寄与した。東京大学ならびに同総合研究博物館にとっても有意義な企画であったと考える。ジャパン・タイムズなど,新聞報道においても評価されたこれらの企画の実現に,寛大な援助を惜しまれなかった鹿島美術財団に改めて深い感謝の意を表する次第である。664
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