6.初唐期竜耳瓶の特徴竜耳瓶に関しては白査と三彩陶はパラレルな関係が看取でき,両者を区別せずに考察できるようである。まず,7世紀後半の竜耳瓶の出土資料をさぐると,陳西・李鳳墓〔上元2年(675)) の自室竜耳瓶2点が初出資料である。鋭角な盤口,2本の弦紋をめぐらす頚部,卵形胴,頭部を渦巻き状につくる特徴のチ竜で,竜柄の基部に鋲をはさむ形にし,メダリオンはすでに消失し,器高9cmと小型品である。これら出土例と時間的に並行関係,および先行すると考えられる自室および三彩竜耳瓶は,主に頚部および胴部の装飾の相違によって,3形式に分けられる。いずれの場合も,胴部は倒卵形で,柚は黄色みをおび,碗などにみられる純白で透きとおるような破璃質のものはなく,また胴部の下半以下は露胎である。その第3形式とする自室品は,頚部の弦紋を1-3本程度めぐらし,貼花文を付けないタイプであり,この形式は,上引の李鳳墓出土の白姿竜耳瓶に類似し,上元2年(675)の葬年を厳密にかんがえると,この形式の生産年代は7世紀第3四半期まで遡る蓋然性もあるが,7世紀後半に盛行するタイプとしておきたい。第2形式は2分でき,(a)は,5本以上の弦紋を頚部に密にめぐらすが,胴部にメダリオンを貼付していないタイプであり,(b)とするのは,頚部の弦紋が2-5本程度と密ではないが,胴部などにメダリオンを貼付するタイプである。いずれも器高が50cmを超す大型品がおおいのが特徴である。三彩品でこの形式に属するのは極めて少なく,東京国立博物館品があげられる。非常に著名な竜耳瓶であるので,あらためて述べる必要もないが,宝相華文のメダリオン,竜柄に刻線文,卵形胴の数カ所に圏線をめぐらすこと,頚部に2本の弦紋がみられることを注意しておきたい。もう1点問題になる三彩品は,ケルン東アジア博物館の三彩竜耳瓶である。器高68.0cmの堂々とした,大型の竜耳瓶であり,器面の施された装飾のいずれをとっても,本品が東京国立博物館の三彩品よりも古式の様相を呈しており,むしろ次の第1形式に近い。最古式の竜耳瓶,すなわち,第lの形式とするのは,頚部に10本をこすような密な弦紋をめぐらし,数個のメダリオンを具備するより丁寧なっくりの白套竜耳瓶である。碑林博物館,松岡美術館,個人蔵品,富山佐藤美術館の4例は最も初期的な様相58
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