nhU 講演会〈アメリカにおける日本美術コレクションの禁明〉の要旨現在アメリカには,公私共に有数の日本美術のコレクションが存在するが,その成立の初期には,純粋な日本美術に対する芸術的価値の評価というよりもむしろ,ある種のエキゾティシズムがあったと言える。そもそも欧米での日本美術コレクションは,16世紀の中部ヨーロッパの王侯貴族らによる中国磁器(china)と日本の漆器Gap組)の蒐集に端を発する。特に中国磁器の方が主であったが,彼らはそれらを大変に異国的(exotic)なものとして珍重し,自身の城内に集め飾り,その城は英語で言えば,“cabin巴tof curiosity"と呼ばれた。16~18世紀にかけてヨーロッパにおける中国と日本のイメージは,そのまま“wonderfulce-ramics and lacquers"であり続け,いわゆる「黄金の国日本」のイメージもまた蒔絵の金飾技法からきているという。欧州でのこのような異国趣味としての日本文化の受容はそのままアメリカにも引き継がれる。1876年フイラデルフイアにて開催された万国博覧会では,1日本(Japan)Jをテーマとした展示が行われ,工芸品を主体とした陳列がなされた。そこで同時に解説として掲げられたパネルに描き出された日本の生活風俗は実際のものとは全く異なる家屋や自然環境いくぶん南国的なとして現れ,それは当時のアメリカの人々に驚きをもって迎えられた。この万国博覧会以前にすでにアメリカでも個人的な日本美術コレクターが誕生していた。例えばウォルター(WilliamT. Walter)は先の万国博覧会に自らのコレクションを貸し出したりもしており,また出身地のボルチモアで蒐集した日本美術を一般に公開していた。あるいはデザイナーであったコールマン(SamuelColeman)は,買い集めた日本の美術品で自宅の室内を装飾していたが,それは袈裟をソファカバーにし,掛物をあたかも額装の壁掛け絵画のようにつるし,仕覆の布をパッチワークのようにして天井に貼り付けるなど,およそ日本文化の理解とはいまだ遠いところにある,異国趣味の一環にとどまっていた。現在のアメリカには貴重な日本美術のコレクションが多数存在している。それは単なるエキゾテイシズムによらず,日本美術を芸術として評価し,より適切な日本文化理解による賜物である。メトロポリタン美術館では展示室にも配慮をして,日本美術展示室には作品を並べるのみにとどまらず,寺院の堂内や書院内部を再現した中に作品を置いて見せることによって,鑑賞者により正確な享受空間を体験させるための試ハ同u
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