① 中国における5-6世紀の法華経美術の研究一一麦積山北韓晩期第10号碑像の図像構成一一研究者:名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程甘粛省天水市麦積山石窟第10号碑像には数多くの説話図像が表され,従来から大きな関心がもたれている(注1)。碑像の図像構成を検討すると,当時に盛んに流行した法華経の思想と密接に関連していることがうかがえ初期法華経美術の様相が示されるといえる。過去の研究では,この碑像に表された図像の内容が紹介する程度に考察されたが,もっとも重要な図像構成の問題は研究されていない。本稿ではそれらの各々の図像およびその図像構成の考察を通じて,北親晩期において展開した仏教図像の複雑な様相の一端を明らかにしたい。一麦積山第10号碑像の図像とその由来代については,下層中央に彫られた結蜘扶坐仏を検討すると,仏は面相が清秀であるが痩せてはおらず,肩幅が狭い。漢民族式の大衣を双領下垂にまとい,内側に僧祇支年)の様相を示している。また,後述する510年代頃の雲岡第38窟の図像と継承関係があり,520年代頃の作品と推測される。碑像の図像配置〔図2)は上中下の三層に分けられ,三層の図像はみな左中右の三部分からなっている。上層は中央に並坐の釈迦多宝仏,向かつて左に仏伝図の剃髪場面が表される。右側は上部の左にアショーカ施土因縁説話による童子布施の場面,右に樹下思惟菩薩,下部には仏伝図の浬繋場面が表される。中層は中央に交脚弥勤菩薩が彫られる。左側は上部の左に誕生,右に九龍濯水の仏伝場面,下部には定光仏授記本生図が表されている。右側は上部に乗象入胎,下部に降魔の二仏伝図が表されてい1. r美術に関する調査研究の助成」研究報告1 . 2001年度助成第10号碑像〔図1)は麦積山第133窟に置かれ,高さは137センチである。碑像の年1 ,碑像の年代と図像配置を着け,腹部に衣帯をかけ,結び目を作って下に垂らす。それらは北貌晩期(494~534l 李静ポ
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