鹿島美術研究 年報第19号別冊(2002)
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一108-注5.結「“変だな"と思われたその瞬間に自然に溶け込む(注22)Jことが大原則である。この展覧会を通して,ポスターが独立した造形表現分野として機能に適した美学を発展させてきたこと,その過程ではしばしば絵画の領域と一体であったことが,公式のポスター観として認められている。以後ポスターは街頭の持ち場を離れ,美術館という“殿堂"において鑑賞されることになる(注23)。ロジェ・マルクスによる最初の提案から実に80年の歳月を隔てて,1978年にパリでポスター美術館が誕生した。19世紀末の“アフイショマニ"は,愛好家の新奇なものに対する関心がもたらした流行であった反面,自国の優れた装飾一産業芸術品を擁護し,そこに大衆教育の効果を認めるという,フランス固有の歴史的必然性を認識した美術批評家たちが導いた現象でもあった。この“アフィショマニ"の受容姿勢が,20 世紀前半の広告産業の繁明期にあっては,ポスターを含めた広告全体の社会的認知を後押しした。そして,約l世紀にわたるポスターの発展に基づく美術館の開設は,ポスターの“美術"としての側面を強化することになり,現在なお先進国の中で際立つほどの,フランスの都市空間に展開するポスターの競演を促したのであった。janvier 1890. (2) Roger Marx (巴d.), Les Maitres de l'Affiche, Paris, Imprimerie Chaix, 1896-1900 graphiques, 1977; Les Maitres de l'Affiche : Reproduction integrale de la collection (3) Roger Marx,“Un musee de l'affiche", L'Estampe et l'Affiche, Paris, 15 decembre 1898. (4) Krzysztof Pomian, Collectionneurs, amateurs et curieux, Paris, Gallimard, 1987, pp.16-17. (5) Rog巴rMarx,“Preface" du cinquiとmevolume d巴sMaitres de l'Affiche, Paris, 1900 (1) Roger Marx,“Preface" a l'Exposition Jules Cheret : Pastels, lithographies, des-sins, affiches illustrees, Galeries du Theatre d' Application, Paris, decembre 1889 (再版JackRenn巴民Mastersof the Posters 1896-1900, New York, Images originale, Paris, Chene, 1978).

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