に示したのである。実際，法華経では仏伝説話は釈迦一生の聖跡ばかりでなく，菩薩行とする意味をも持っている。釈迦は自分自身の聖跡，すなわち菩薩行を示して衆生を悟らせるのではないかと思われる。碑像の上層と下層に他の仏伝場面もあるが，それは法華経に強調される仏伝のエピソードを選んで表したものである。四上層両側の説話図とその相互関連上層の左側には剃髪の場面が表されている〔図5)。太子は出家してから髪を剃り，それによって人間の悩みと修業の障害を斬ることを象徴して，すなわち世俗との繋がりを斬ることを意味する。場面中の8人の比丘の登場は諸経典に見られず，自由に表したものである。2，浬繋上層右側〔図6)の下部に浬禁場面が表されている。この場面では釈迦仏が仰向けに旬、し，釈迦の頭の方に1人の老婆がやって来ており，後ろに一団の雲気がある。釈迦の足元では比丘が釈迦の足を撫でている。偽経の『摩詞摩耶経J巻下によれば，その老婆は空を降りた摩耶夫人であるに違いない。仏足を撫でる人物は諸仏伝経典に記される弟子大迦葉である。また釈迦仏の後ろに髪をヲlっ張る3人の俗人が表される。この浬葉図に見られる釈迦仏の足を撫でる比丘，および釈迦仏の後ろに立つ俗人の表現は直接雲同第38窟の浬葉図(注11)を継承した。第38窟の浬繋図は雲岡石窟ないし北朝期における，最初の本格的な浬繋場面である。雲間第38窟と麦積山第10号碑像の浬繋場面はどちらも，画面中央にある釈迦多宝仏の右外側に配されて，浬繋と法華経との関連が推測される。『妙法蓮華経J巻5I如来寿量品J(r大正蔵』第9巻42頁下)には，如来が無量の寿命を持ち浬葉に入ることはない。衆生になかなか如来と逢い難いことを感じさせるため，如来が浬襲を唱え，方便で説法することが説かれる。つまりこの浬繋図は衆生を教化するために，方便説法の形式で表されたのである。とりわけ，雲岡第38窟における浬繋図の下層には楽隊が表され，浬繋図に楽隊を表すのは不思議といえるが，それはまさに知来が浬繋を唱える表現である。麦積山第10号碑像では，上層左側の剃髪場面は右側の浬繋場面と対称的に表され，浬繋とは人間の生死から解脱して永遠の法身に達成する表現で，剃髪場面は世俗との1 ，剃髪-6-
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