品JU大正蔵J第14巻539頁)や「文殊師利問疾品J(同544頁中)などに基づき造形化下層図像では,結助n~夫坐イムの左側上部に初転法輪,右側上部に維摩文殊が表されて蔵J第9巻11頁上中と12頁上)の記述に相応する。経典では,釈迦仏が出家成道の伝2,維摩文殊右側の上部に維摩文殊の問答図が表されている。この場面では建物の中で右に維摩が塵尾を持って坐り,左に文殊が坐っている。文殊の侍者などは一切表されず,極めて簡略な表現といえる。維摩文殊の問答図は鳩摩羅什訳『維摩詰所説経Jでは,i方便された。経典には維摩詰居士が病気を現し,人生の無常,壊れることのない如来の法身すなわち大乗仏法を得させることを,文殊菩薩たちに説く。維摩詰経すべてがこれを主題として展開しており,維摩文殊の問答図は維摩詰経ないし大乗経典の象徴する主題を表現したものといえる。3,表現の意図いる。初転法輪は釈迦仏が四諦,八正道,十二因縁の小乗法を説く表現で,維摩文殊は大乗的な空の道理を象徴する大乗法の表現である。つまり,小乗法と大乗法が対称的に示され,両者の聞に配された結蜘扶坐仏は小乗法と大乗j去を共に説く図像構成となる。前述したように,この結蜘肢坐仏は法華経の教主である釈迦仏と推測され,釈迦仏が小乗法と大乗法を共に説くのは,まさに「妙法蓮華経J巻2i嘗日食品J(r大正記を説くのは,方便で衆生を仏道に導くからである。過去には釈尊は鹿野苑で声聞人たちに四諦法の法輪を転じ,現在はふたたびそれらの人々に無上の大法輪(すなわち大乗的な空の道理,あるいは成仏の真理)を転じる。つまり小乗法を代表する仏伝説話は大乗法を転じるために,方便として説かれるものである。また,下層図像では中央の結蜘扶坐仏を挟んで,仏法を象徴する初転法輪と維摩文殊の下方に力士が2人ずつ表され,仏と仏法を守護することが明らかである。六全体的な図像構成以上,麦積山第10号碑像の図像を検討した結果,中軸親上における結蜘扶坐仏(釈迦)十交脚菩薩(弥勅)十二仏並坐(釈迦多宝)の組合せは,直接雲岡第38窟のそれを継承して発展させたものといえる。この構成は『妙法蓮華経』巻7I普賢菩薩勧登品」と関係する,法華経の信者は将来千仏によって救済され,弥勅菩薩の児率天浄土に往生する主題を示している。中層と上層の中軸根両側における説話図像は法華経に8
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