鹿島美術研究 年報第19号別冊(2002)
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phu 8人のインタビューは,その内容を半分程度にまとめて次の展覧会図録に掲載された。⑭ 初期『こどものとも』の原画制作について研究者:宮城県美術館学芸部上席主任研究員有川幾夫l.はじめに絵本は絵と文章が一体になって成立するものであり,絵本の分析や研究にあたっては,出版文化や児童文学など多様な観点からのアプローチが行なわれているが,ここでは特に月刊絵本雑誌『こどものともJの最初の編集者松居直とその原画の制作に従事した画家へのインタビューを通じて,初期の『こどものともjにおける原画制作の一端を明らかにすることを目指した。インタビ、ユ一対象者は次の9人である。(以下,関係者のコメントで特に出典の記載のないものはインタビューによる。)池田龍雄,太田大八,小野かおる,佐藤忠良,長新太,なかのひろたか,松居直,山本忠敬,山脇百合子(インタビュ一時期の関係で収録できなかった池田龍雄を除く『はじめての美術絵本原画の世界』展図録宮城県美術館/練馬区立美術館/北海道立帯広美術館/和歌山県立近代美術館2002年2003年)なお,絵本原画の造形的な側面については,上記の図録で別に考察を試みた。(i伝達する絵画Jrはじめての美術絵本原画の世界』展図録前掲)2.福音館書庖と松居直現在の福音館書庖の母体となる「福音館jは1916年,金沢市に創設された。はじめ聖書・賛美歌とキリスト教関係の図書を扱う書庖として発足したが,やがて一般書も扱った。戦後,教育参考書の出版を始め,i福音館小事典文庫jなどを刊行,1952年に有限会社福音館書庖(現在は株式会社)が創立され,同年東京に移転した。東京進出後,福音館書店では将来的な経営の安定のために新しい分野への進出が検討された。当時の社長佐藤喜一の「女と子どものものjという示唆から,家庭教育と保育に関する月刊雑誌『母の友Jが1953年9月に創刊され,その中にl日1話の形式で1ヵ月分の物語「こどもにきかせる1日1話」が掲載された。こうした経験を経て月刊の絵本雑誌『こどものともJが創刊されたのは1956年4月である。福音館書庖は以後,創作絵本や童話の出版,海外の絵本や童話の翻訳出版など児童書の分野で特色ある出版社として現在にいたっている。(福音館書庖の歴史については,r福音館書庖

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