鹿島美術研究 年報第19号別冊(2002)
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9蒼額廟碑〔図4J, 10鮮千頭碑,11武栄碑,12郭泰碑,13魯峻碑〔図5J, 14j番乾碑の10碑を確認した。例外なく,中央やや上部或いは碑文より上の中心線上に「穿」をあらわす。穿以外の装飾はなく素文を基本とするが,10鮮子演碑は碑首の碑陽面左側に龍,右側に虎,陰面に鳳風を椋刻する。半円首のものは,15孔謙碑〔図6a b J, 16孔君墓碑,17孔宙碑〔図7a b J, 18衡方碑,19肥致碑,20孔彪碑,21韓仁銘,22梧台里石社碑額,23越寛碑,24王舎人残碑,25白石神君碑,26鄭季宣残碑,27張遷碑,28奨敏碑,29唐公房碑〔図8a b J, 30趨到残碑,31孔褒碑の17碑を確認した。中央やや上部或いは碑文より上の中心線上に「穿」をあらわすが,16孔君墓碑,19肥致碑,23越寛碑,25白石神君碑,27張遷碑などのように孔を穿たないものもある。半円首には縁に沿って「量」と呼ばれる三条の円筒状のものが左前方から右後方へ或いは右前方から左後方へ斜めに孤を描きながらあらわされるものが過半数の10碑を数え(注2),中でも,23越寛碑,26鄭季宣残碑には,量の両端に龍頭を彫出している〔図9J。また,18衡方碑〔図10J,24王舎人残碑の半円首の側面上部に沿って,前後にそれぞれ縄状の装飾が作られている。28奨敏碑〔図11Jには龍を彫出する。量以外の装飾としては,16孔君墓砲は碑陽周縁に二重の波形を線刻し,22梧台里石杜碑額〔図12Jの陽面には題字の上に3仙人,陰面には穿の上に樹木,獣面,鳥,仙人,側面には龍が浮彫であらわされ,25白石神君碑〔図13Jには三角形の碑額部の周囲に仙人と2龍が浮彫されている。そして27張遷碑〔図14a b J は,碑側に沿って絡み合う龍を,碑頂に鳥形(破損)を彫出する。32韓勅碑以下は,碑首が後補あるいは残碑,また未調査のため碑形と装飾意匠は不詳である。碑肢については,伝世の漢碑は移座されたものが多く殆どが後補であるが,25白石神君碑の亀扶は今に伝わっている。そして近年出土した24王舎人残碑には亀扶(頭部欠損),10鮮子演碑には方扶,墓中から出土した19肥致碑〔図15Jには3つの耳杯を彫出した方肢が付属している。碑文の内容から,i:莫碑は墳墓の傍らに立てられ故人の功績を述べる墓碑26基,嗣廟の傍らに立てられた洞廟碑11基,善政を記念して立てられた徳政碑9基,公文書を記した文書碑3基,社の傍らに立てられた社碑l基に分類されるが(注3),これらの分類と,碑の形式および装飾意匠との開には積極的な関連性を見いだし難い。なお,般に漢碑は地上に立てられたが,19肥致碑は墓中から出土しており,珍しい。-170-

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