C:東京国立博物館所蔵の白薩摩茶碗〔図4J 口縁まで垂直に立ち上がっている。直径6.6センチの広い高台は,垂直に削りだされ,畳付きの一部が目跡のために紬が部分的にはがれている。高台内には渦巻き状の浅い彫りが見られる。茶碗の見込みには,幅1センチ弱の楕円形の,細かな砂のような胎土日(練砂目)が5つ付いている(注8)。白色陶土で,紬掛けは透明紬の総柚で細かい貫入が全体を覆っている。鹿児島市立美術館の白薩摩茶碗〔図1Jより全体に黄味が強しミ。高さ:9.1cm 口径:12.8cm 高台径:5.8cm 重量:40lg 口径12.8cmの大ぶりの碗で,口縁を三角形に歪ませである。口縁部から裾,高台に向かつてすぼませるような形をしている。高台内は,渦巻き状の浅い彫りがみられ,畳付には焼成時の砂がついている。白色陶土に透明柑の総柚掛けで,全体を覆う荒い貫入に,茶色のシミがみられる。見込みに目跡はない。鹿児島県トカラ列島諏訪之瀬島切石遺跡出土遺物のほぼ完品の茶碗3点〔図5Jは,この茶碗との類似点が多いことで注目される(注9)。胎士と茶碗の大きさ,高台の高さ,高台内の渦巻き状の浅い彫りなどがそれである。その内のl点には楕円形の日跡縁部の歪みは,鹿児島県で現在調査された古窯跡からの出土品の中には見られないが,消費地の出土例に伝世品と同じ作行きが見られることは重要と考えている。高さ:8.9cm 口径:13.6X11.9cm 高台径:5.6cm 重量:384g 口縁部に大きな歪みをもった,口径13センチの大ぶりの碗である。全体が蓮の葉を一枚,手で包み込むような形を成し,口縁部は葉の輪郭線を模して波をうたせ,ーケ所,ベベら口にしている。茶だまりを中心に胴部の内外に葉脈の文様を陽刻している。胴部は腰が低く,わずかに口縁部にかけて外反する。高台の側面には波涛文が陽刻され,高台内は渦巻き状の浅い彫りが見られる。見込みには「くjの字形の胎土日(練砂目)の目跡が5つある。白色陶土に透明柚が総体に施されて,荒い貫入が入り,青味が強い。が3つある。これらの茶碗の特徴は口縁部に歪みをもたせて成形していることで,口D:東京国立博物館所蔵の蓮葉丈茶碗〔図6J -390-
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