鹿島美術研究 年報第19号別冊(2002)
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(注10)。E:個人所蔵の白薩摩茶碗〔図7JF:鹿児島市立美術館所蔵の白薩摩茶碗〔図8J高さ:8.7cm 口径:12.7cm 高台径:6.5cm 重量:133g 口縁部が外反りした茶碗で,胴部の下半分に聴瞳困が文様となって残る。高台は竹の節状に削られている。高台径は8.7センチと広く,高台内は平らである。高台の畳付にも,見込みにも日跡はない。白色陶土に透明紬の総柚掛けの黄味がかった細かい貫入の入った茶碗である。土が薄く成形されて,重さは133gと軽い。胴裾に旦と云う宇が鉄柚で書かれている。この字はハングル語で「チョクjと読み,意味は墓を指す。同じ字が書かれた井戸形茶碗が白薩摩茶碗でもう一点知られている高さ:8.4cm 口径:1O.6cm 高台径:5.6cm 重量:265g 口径が10.6センチの中ぶりの碗で,腰に丸みを持たせ,まっすぐ口縁部まで立ち上げた形の茶碗である。高台内は平らで,彫りは見られないが,焼成時の庇が高台内に残る。畳付きに紬の剥がれた個所はない。この高台の作りは,作品E[図7Jと似ている。見込みに目跡は見られない。白色陶土で透明紬の総柚掛け,細かい貫入が入る。胴部に入った太い聴瞳目の文様は,作品E[図7Jと類似のものである。3-2 :窯E止出土陶片(生産窯の出土遺物について)鹿児島県では,近年窯跡の発掘調査が活発に行われ,鹿児島県姶良郡の帖佐宇都業,御里窯,元立院窯,山元窯と鹿児島市の竪野冷水窯,鹿児島県東市来町の堂平窯の6窯が調査され,17世紀に稼働していた窯であることが明らかにされた(注11)。ここでは小山富士夫氏の調査及び,近年の窯祉発掘調査によって出された内薩摩茶碗の特徴を,窯の性格と合わせて見てゆくことにしたい。帖佐宇都窯:帖佐宇都窯は島津義弘が茶陶を焼かせる窯として最初に築かせた窯といわれている(注12)。昭和9年の小山氏の発掘調査では「火計手抹茶碗残片,数量1J と記載された,高台部分を含む底部陶片一片がある(注13)。平成13年に始まった姶良町教育委員会の帖佐宇都窯の発掘調査は,まだ報告書が発刊されていない。しかし鹿児島陶磁器研究会の会報(注14)に,窯E止の前面の畑から

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