IWJの刻印を持つ。この作品は1860年にヴィクトリア女王からロンドンのヴィクトリ3) (注11)は,まさに童文輪花鉢をコピーしたものと考えられる。マイセン窯の窯印43.5,長さ41.5,幅14.5センチで,赤・青・緑・黄・紫・黒の柚薬と金彩が使用され柿右衛門様式に限らず,中国製あるいは日本製磁器を模倣した作例も見られるが,ドレスデン・コレクションの鉢がマイセン窯でそっくりそのまま模倣制作された例がある。周知のようにマイセン窯では,1710年に技師ベットガーが磁器焼成に成功した。中国や日本の磁器を写すことから始まったヨーロッパ製磁器であったが,1730年頃制作されたと考えられているマイセン窯製の「色絵花井丈輪花鉢J(口径24.1センチ)[図である交差した剣が青色の紬下彩で描かれ,ドレスデン宮殿の収蔵を示すIN: 445J ア・アンド・アルパート美術館へ寄贈されている。ここに紹介した3点の資料は,輸出磁器の3つの場面を指し示すと同時にそれぞれを繋いでいる点で重要で、ある。彫像としての柿右衛門様式陶磁器は陶器と磁器の器と書くが,陶磁器は決して器だけではない。鑑賞を目的とする置物としての彫像作品の一群がある。ここでは勤務館で所蔵している「伊万里柿右衛門様式色絵馬J2体〔図4,5)を中心に考えてみたい。高さ45.0センチほどもある柿右衛門様式の馬彫像の類例は現在わず、かに5体が確認されているだけで(注12),また,先の重文輪花鉢のような模倣作品も今のところ確認していない。成型に使用した型も有田ではまだ発見されてはいないようである。この2点も輸出磁器で,1978年(昭和53)ごろにフランスから日本へ帰ってきたようである。2体とも基本的なフォルムは同じで模様が異なる。身体の白い馬は,高さており,金彩の轡に市松文の面繋,赤・青・黄・紫の手綱,三鈷杵様の文様の胴掛けに緑と黒を重ねた斑模様を持つ。紅い馬は,高さ44.5,長さ41.0,幅14.5センチと白い馬とほぼ同じで,同じ型を使用したのではないか。彩色に赤・緑・黄・紫・黒の軸薬と金彩を使用し,金彩の轡に七宝繋文の面繋,青・黄・紫の手綱,牡丹唐草文の胴掛けに緑と黒を重ねた斑模様を持つ。見開いた眼,大きく歯を見せた口,鼻息の荒そうな上向きの鼻,ぴんとした耳,黒いたてがみ,太い首と脚,力強い造形は見事であ433
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