鹿島美術研究 年報第19号別冊(2002)
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< Naturale >のうち,第l巻と第2巻は,ミネソタ州ミネアポリスの私立のバッケン図Minnesota) (注3)。第l巻は,ベルギーの王立図書館所蔵の本とされており(Bibilio-th句ueRoyale de Belgique, Bruxelles, MS. BR II 941),第3巻が行方不明の巻である。beroneとある。6冊のうち,ジェームス・フォード・ベル図書館所蔵のくHistoriale>の分(colophon)にある名前は,Johaness d巴R巴sbaisと読めるoResbaisは,カンブロン修II.カンブロン修道院の歴史と蔵書下と記する。)3冊からなる,全7冊の,1組の写本であったが,1冊は,18世紀の同修道院のカタログにおいて,すでに不明で、あり,現存するのは6冊である。このうち,< Historiale >の第2巻と第4巻は,ミネソタ大学ジェームス・フォード・ベル図書館が所蔵している(B12bofVi, the Jam巴sFord Bell Library, the University of 書館が所蔵している(TheBakken Library) (注4)。第3巻は,ロンドンのブリティッシュ・ライブラリー所蔵の1冊とされる(TheBritish Library MS. Add. 15583)。写本の成立年代は,13世紀末の1280年頃と推定されている(注5)。年代記述のある別の写本と,この写本の装飾の類似から同定したものである。フォリオの下方欄外には,14世紀と推定される字体で,カンブロン修道院の所蔵名が加筆されている。第1フォリオに,Liber Sancte Marie De Camberone,以下,ほほ10フォリオごとにDeCam-2冊にのみ,書写した人物の名が残っている。それぞれ最終ページの,巻末の記録部道院に残る,土地・財産記録に記載された,カンブロンの北20kmにある同名の小部落と推定される(注6)。カンブロン修道院St.-Marie de Cambronは,現在のベルギー,エノー県に,シトー修道会によって,1148年に創設され,12世紀後半から,13世紀にかけて,領地を拡大し,ブラパント北部の地方において指導的な役割を果たしていったことが,修道院の土地台帳・財産記録から知られる(注7)。カンブロン修道院の図書室旧蔵の蔵書について調査した,ロベール・プランケによれば,カンブロン修道院には,スクリプトリウム(写本室。Scriptorium)があったことが知られており,中世には,写本の制作が盛んであり,蔵書も充実していた(注8)。修道院は,フランス革命の際,廃絶され,建物はほとんど取り壊され,財産は売却された。図書室の蔵書は,(急逮10月に目録カタログが制作された後),1789年12月に競売に付せられ,その後イギリスの収集家を経てミネソタに収められた。578
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