N.同時代のカンブロンの写本装飾の形がはっきり浮かびあがるような装飾効果を醸し出している。泡沫文様による強弱のシルエット効果をもたず,曲線的な装飾方法もあり〔例図2,4 J,両者を配分することで変化をつけている。いずれの文字も,装飾は,イニシャルから延長し,ページの上下,左右の縁近くまで,達している。その底辺に,魚、のモチーフが描かれていることがしばしばある〔図3下方〕。ミネソタ本と同ーのセットとされるベルギー王立図書館BRII941とブリティッシユ・ライブラリーAdd.15583の2冊は,写本の形態,装飾頭文字とも,Iの文字だけは,ミネソタ本にない字形と装飾があるが〔図5J, ミネソタ本に一致する〔図6J。文字の内部と周辺に,多種ながら繰返し描かれる文様の構成がこの写本装飾の特徴である。カンブロン旧蔵の13世紀後半から14世紀初頭にかけての写本のうち,ベルギー王立図書館(ブリユツセル)とブリティッシュ・ライブラリー(ロンドン)で調査したなかで,ミネソタ本と同一のセットを形成するくSp巴culum>の2冊(BibliothとqueRoyale MS. BR II .941) (British Library MS. Add. 15583)以外に,ミネソタ本と同じ様式を持つものの写本番号は,以下の通りである(注9)。BibiliothとqueRoyale de Belgique (Bruxelles) , BRII 2297 A昭ustinusBR II 943 Vincent et al. BR II 950 Petrus et al. The British Library ; Egerton 628 Augustinus, Boethius (図10JEgerton 629 H昭onisde S. Victore (図11JEg巴rton630 Basilius et al. Add. 15280 Fravi Josephi Antiquitaturm Judaiearum (図13J装飾イニシャルは,同じ写本のなかでも,大きさが変わり,大,中,小の大きさがみられる〔図11J。これに対して,< Speculum >では,装飾イニシャルの大きさは,ほとんど一定である。ただし,ミネソタ本の
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