のみ,イニシャルのサイズがやや大きい。すべての写本に後世に加筆された,カンブロン修道院の所蔵名がある。写本は,アウグスティヌス,ボエテイウスなどの神学的内容をもつものである。以上の写本の装飾には,いずれも,ミネソタ本とまったく同ーの様式の文様装飾が認められる。この調査で,13世紀の末のカンブロン修道院の写本に,統一的な文様の装飾様式があり,ミネソタ本のくSpeculum>は,そのなかの1つであることが明確になった。つぎに,Bonne EsperanceのくSpeculum>の装飾を,カンブロンのくSpeculum>と比較する。ベルギー,エノ一Hainaut県のパンシュBinche近郊の小集落,ヴェルレイユ・レ・ブラジィユ~Vellereille-les-Brayeauxにある,コレージユ・ド・ボンヌ・エスペランスCollとgede Bonn巴-Esperance (小学校から中・高校まである学校)は,かつて,プレモントレ修道会のボンヌ・エスベランス修道院Abbayede Ste. -Marie de Bonne-Esperanc巴であった(注10)。旧修道院の蔵書は革命の折に散逸したが,近年,コレージュ内の図書室に6冊の写本が残されていることが再発見され,その内容が2001年末に報告された(注11)。それによると,コレージュ所蔵の写本6冊のうち5冊はヴァンサン・ド・ボーヴェのくSpeculum>であり,< Speculum Historiale>とくNaturale>の,それぞれ不完全な1セットずつである(注12)。この報告は,この写本の文様装飾イニシャルをカンブロンの装飾家にアトリビュートしている。以下は,この報告を得て筆者が現地に赴き,調査して得た知見である(写真は,ベルギー王立文化財研究所が所蔵しているが,同研究所の写真資料は文様イニシャルについてはすべてを網羅しておらず,以下の論考の該当図版を一部欠いている)。ボンヌ・エスベランス学校所蔵のくSpeculumHistoriale>は,第1巻(1 -8書)(BE MS. 1)と第4巻(25-32書)(BE MS. 2)である。これと3巻あるくNaturale>のうちの第1巻(10-16書)が,文様装飾である。この3巻は,ミネソタ・カンブロン本とほとんど同じ書物形態・構成をもち,各書のイニシャル文字には,ミネソタ・カンブロン本と同ーの様式の,ベン装飾形式による文様装飾が,赤,青(濃紺)の2色でなさV.ボンヌ・エスペランス修道院の『スベクルムJ581
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