第2点は,ボンヌ・エスベランスのほうに,やや,フリーハンド的な筆致がみられtorial巴2,MS. 2 , f. 178, A.)。のPの縦の棒は,ページの端に達するほど長い。ミネソタ本の規則的な5弁花の花びVI.オーヌ修道院とシトー修道院の『スベクルム』れている。装飾は,赤,青(濃紺)2色であり,文様の種類,組み合わせは,カンブロンの写本とほとんど同一である。しかし,ボンヌ・エスペランス本には,カンブロンの文様装飾と異なる点が2つある。lつは,文様に,カンブロンの写本には見られないモチーフがあることである。文字枠の2色を区切る文様の中心が,カンブロンにはない四角いパターンである(図版なし。例,MS 1 ,Historiale 1, f.11, Q. f. 109, A. 134v, A.138, A.151, A. 209, F.)。千鳥格子のような,四角形を組み合わせた文様(赤,青の2色)がある(図版なし。例,His-ることである。〔図14)のPの縦の棒の波線にはっきりみられる。この5弁花の表現も,機械のように正確なカンブロンのものと異なる。また,字の形態も,カンブロンに較べて,ソフトに歪んでいる〔図15)。ボンヌ・エスベランス本の装飾は,カンブロン本と同様の装飾の様式であり,両者は極めて類似している。ただし,上記の点において,ミネソタ本と同ーの装飾家の手によるとは思われない。オーヌ修道院のくSpeculum)今回,ベルギーで調査した写本のうち,同様のMS例が他にも見つかった。ベルギー王立図書館,BRII文様装飾1063のくSpeculum)の写本である。カンブロンと同じ地方の,シト一派のオーヌ修道院Aulne旧蔵のくSpeculum)の写本である(注13)。この装飾も,ベン装飾形式による,文様装飾であり,文様の種類,構成ともに,ミネソタ本と類似しているものの,相違点が認められる。もっとも大きな相違点は,イニシャル装飾に,金の小さな点が施されていることである〔図16)(金は図版では鮮明で、ない)。顔料は,オレンジに近い。このほか,170v らの形態に対して,オーヌの5弁花は,ややいびつである。あきらかに,異なる装飾家の手になるが,その文様装飾は,赤(オレンジであるが)と青の2色の彩色,モチーフの種類,構成方法ともに,カンブロンの写本と類似する-582-
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