鹿島美術研究 年報第19号別冊(2002)
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(2) 国際会議出席場期間:2001年11月12日〜14日所:オーストラリア報告者:東京文化財研究所名誉研究員新井英夫1.はじめに世界に分布する文化財の中で、熱帯・亜熱帯地域のそれは,立地条件が高温・多湿のゆえに生物による甚大な被害を受けてきた。この生物被害を防ぐには,生物被害の多発する地域で文化財の保存に携わる学芸員・修復技術者・保存科学者が,それぞれの知見を交流する必要がある。とくに,東南アジア等の生物被害多発地域の担当者が,参加しやすい国際会議の存在が求められる。インド国立文化財保存科学研究所の0.P.アグラワル所長は,上記の構想、を実現するために,1989年2月にインドのラクナウで第1回国際文化財生物劣化会議(The1st. International Conference on Biodeterioration of Cultural Prope町:略称ICBCP1)を開催した。筆者は,この分野の研究者が,いずれの国でも少数派に属し連携をとる必要性を痛感していたので,同氏の意見に参道してICBCPlに参加した。その後この会議は,国際文化財生物劣化学会(InternationalCouncil of Biodeterioration of Cultural Property:略称ICBCP)を発足させ,インドを本部とし,3年おきにアジア地域で文化財の生物による被害と対策の国際会議を開催する努力を続けている。すなわち,ICBCP2は1992年10月に日本の横浜でICBCP3は1995年7月にタイのパンコックでICBCP-4は1998年11月にイランのテヘランで開催してきた。ICBCP 5は,オーストラリア博物館のヴイノド・ダニエル保存科学部長が,ICBCP-5組織委員会委員長として尽力し,2001年11月12日(月)から14日制まで,シドニーでの開催を実現した。すなわち,オーストラリア博物館のアトリウムに,アジア地域6カ国,欧米6カ国,アフリカ1カ国から84〜100名の参加者を迎えて,広範にわたる文化財の生物劣化の研究成果が発表された。① 第5回国際文化財生物劣化会議(略称ICBCP-5) 648

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