鹿島美術研究 年報第19号別冊(2002)
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(1)筆者らの文化財の参加プロピレン(POと略記)による標蒸法の報告は,酸化エチ(3)筆者は,米国ニューヨーク,メトロポリタン美術館のR.J.ケスラ一博士から,2002(4) 生物被害が多発するアジア地域の文化財保存担当者が,参加しやすい場を提供す年6月に同館で開催する「美術品・生物学・保存科学国際シンポジウム」への招聴座長を務めることにあった。本会議に参加中およびその後の展開を含めて,ICBCP-5 の成果を以下のように考察した。レンや臭化メチルに代わる低毒性で環境を汚染しない文化財の加害生物防除法を提出した。発表後,ドイツでパイケン爆蒸を推進しているG.ピンガ一博士から,PO標蒸法を輸入したいとの申し込みがあった。ドイツでも建造物の木材を腐朽する乾腐菌による被害があり,その対策を求められている。パイケンには殺菌効力がないので,PO:壊蒸法をドイツで実施したいということであった。(2) ICBCP 5に参加していたフランスの国立画像資料保存研究センターのB.ラヴェドリン所長から,PO爆蒸法は大変興味ある方法なので,2002年5月にパリで開催予定の第4回国際画像文化財保存科学シンポジウムで講演してほしいとの招鴨状が届いている。筆者らが開発した文化財の燥蒸法をICBCP5で発表する機会を得て,国外で評価・認知されるに至ったことを多としたい。本シンポジウムは,全て欧米からの研究のみで構成されている。状を受領している・このシンポジウムのプログラム40編中に,アジアからの参加は日本からの2編だけで,その他は全て欧米の研究のみである。る国際文化財生物劣化学会の存在意義は依然として大なるものがある。4.おわりに鮒)鹿島美術財団の国際会議出席助成を得て,オーストラリアのシドニーで2001年11月に開催された第5回国際文化財生物劣化会議に参加することができた。そして,所期の目的を達成し,それに加えて筆者らが発表した酸化プロビレンを用いたアルプ慎蒸システムによる文化財の生物被害防除の研究が欧米で高い評価を得ていることが明らかとなった。また,米国およびフランスで開催予定の文化財の生物劣化に関連する国際会議のプログラムを調査すると,アジア地域がイニシアチブを取る国際文化財生物劣化学会(ICBCP)の活動は,必要かくべからざるものであると再確認した次第である。651

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