れるのは(Willer1998, 84Abb.22 [肩J; 84Abb.24 [左腕J),ロウの板の継ぎ目を均すために,熱した金属の箆状の道具を使ったことを示している。〔マフデイアのエロース〕の場合,滴の流れは必ずロウの板の継ぎ目のあった位置から始まっている。少なくともこうした箇所では牝型にj夜体のロウを流し込んだのではない(Willer1998, 84 85)。現在のブロンズの厚さに,牝型に敷かれたロウの板の厚さが認められる箇所は次の通り。腹部と胸部は特に薄く1.5-2. 5mmで,これにところどころロウの小片を指で押しつけて補強している。肩と背中は翼を取り付ける必要から厚く,6mmに達する。上腿には挺子の作用が働くため,その破損した稜の厚さは最大で8mmo下腿(腔)は薄く,最も薄いところで2mmしかない(Willer1998, 85n22)。おそらく鋳造土を入れる前に一度蝋型を全部組み立てて全体の具合を見,修正を加えることもあったかも知れない。もう一度各部分に解体して次の作業に進んだ。(4) 鋳造原型の中に鋳造土を入れるまずコンピューター・トモグラフイー(CT)によって,またさらに解体後支脚=左脚の中にあった土そのものについて,鋳造士が調査された。有機物質として毛や刻み藁などを全く含まず,ただ多数の小さな(2-10mm)木片が混ぜ、入れられていた(Willer1998, 85n23)。これは他に例のない稀なことである。鋳造士が採取された土地は特定できなかったが,ただアテーナイのケラメイコスだけは排除される(Schneider1994)。すなわち〔マフデイアのエロース〕はおそらくアテーナイで制作されたものではない。(5) 錆造原型の中に鉄の支持棒を入れる修復前に撮られたエックス線写真では像の内部に心棒が縦横に入っているのが認められるが(Willer1994 [AgonJ, 972Abb. 2 -3),これは発見当初行われた修復の際の処置であり,制作時の鉄の支持棒は残っていない。鉄の支持棒は土台に固定しておき,(トルソの)鐸造原型を鋳造坑の土台に据える時に突き入れて固定した,とヴイラーは推測している(Will巴r1998, 85)。(6) 鋳造原型の表面をロウで仕上げ,湯道と通気管を配置する(7) 固定釘を配置する固定釘は鉄製で,長い円錐形,最大直径は約4mmである(Willer1998, 85n24)。〔ピレウスのアポッローン〕の鉄の固定釘は正方形断面で2mmX2mm,長さ最大2cm(Mattusch 1975, 212-213), [チヤツツワースの頭部〕の鉄の固定釘の断面は一辺4mm69
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