鹿島美術研究 年報第19号別冊(2002)
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(8)外型を着せ,加熱してロウを排出するの三角形である(Haynes1968, 112) 0 Cマフデイアのヘルメ柱〕の固定釘はブロンズ製であり,この違いは両者が群像であったというこれまでの通説(Studniczka1926; Puchs 1963)を否定する論拠に数えられる。1995年にムルロで行われた復元的実験によれば,最大の分譲であるトルソについてはロウを溶かし出したあとブロンズを流し込むまで,中型と外型を完全に乾燥させるためにおよそ三日間を要したと推定される(Pormigli[cura) 1999)。(9) ブロンズを流し込む合金分析によれば,Cエロース〕のブロンズは他のヘレニズム期の大型ブロンズ像の合金とは異なっている。鉛の比率が高いことは同じだが,それと同時に錫も高いのである(表1参照。なおこれは〔ヘルメ柱〕にも共通することである。表2参照)。前5世紀のブロンズ像制作に関する碑文によれば,錫の価格は銅の約六倍であった(Zim-mer 1985, 45)。安価な鉛を増やす場合,高価な錫を減らすのが普通である。この調合について説得的な説明はまだ見出されていない。トルソについては下から順に11.8 16.2-17.9%と,上の方が鉛の含有率が高いので,上下逆に置いて鋳造した可能性がある。合金分析を考慮して逆算すると,Cエロース〕に要したブロンズの重量は,欠損部分と失われた弓矢を含め約55kgだったと推定される。無論両足のほぞの鉛を除外した重さである。湯道などのためにもほぼ同量のブロンズが必要だったから,鋳造時には併せて約110kg必要だ、ったと推定される。これはおよそ12.5 ~に相当する(Willer1998, 86n28)。ただし分譲ごとに前の鋳造の後で切り落とした湯道などを再利用したとすれば,これよりも少しで済んだ筈である。同分鋳各部分の熔接トルソへの翼の装着,および持物の手中への装着は通常の「鋳掛け熔接」であるが,それ以外はすべて「楕円形鋳掛け熔接jである(Willer1998, 84Abb.23, 86Abb.26)。左脚と左前足の聞の熔接も「楕円形鋳掛け熔接JoCリアーチェABJの熔接部に沿って認められる楕円形のくぼみについて,フォルミッリは錆造後に彫られたと推測したが(Pormigli 1984), Cマフデイアのエロース〕についてヴイラーはすでにロウの段階で準備されたと考えている(Willer1998, 87n33, 86Abb.23)。金属を彫る手聞を考えれば正当な推論であり,CリアーチェABJの場合もそのように作られた可能性があるが,-70 -

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