(5) 湯道と通気管を配置する(6) 固定釘を配置し,外型を着せるで作り,完成したロウ原型に装着したことが解る(Willer1994 [HermeH], 964 Abb. 8)。これに対し顎ひげ,後ろの四本の編髪,額の上のアjレカイック風の髪房,両耳,鼻,これらは粘土の原型では粗略に準備されていただけだったところ,鋳造原型の段階でかなり厚くロウを盛ったため,ブロンズは厚い無垢になっている。その結果こうした部分は鋳造の不備を免れている。柱と同様頭部にも鋳造土は内部に全く残っていないため,粘土の性質は不明である。頭部の中に残る粘土状の物質はおそらく海底の堆積物で,鋳造土ではない(Schneider1994)。ロウ原型全体を逆さにし(後述),蜜蝋で湯道と通気管を配置した(Mahdia1994, Farbtaf. 33, 2 )。これらは鋳造後根元で切除され,ブロンズの表面に直径28mmの円形切断面となって残っている(Willer1994 [HermeH] , 964Abb. 9)。注目されるのは,肩のあたりで自由な動きを示す髪房とタイニアが湯道・通気管としても役立つたと推定されることである(Willer1994 [HermeH], 961-962)。最後に湯を注ぎ入れるための漏斗状の湯口を取り付けた。エックス線写真(レントゲン写真)によって,固定釘は一辺約4mmの正方形断面のものが計26本使われたことが分かる(Willer1994 [Herm巴H],964; Mahdia 1994, Farbtaf. 33, 2 -3 )。ブロンズ製である。〔リアーチェAJのブロンズの固定釘は4X4rnmと5x 5mm, (リアーチェBJのブロンズの固定釘は4x 4mmであり,この寸法は経験に基づいてすでに前5世紀には規格化されていたものと思われる。外型を着せる際,熔け出るロウの排出口を鋳型(外型で包んだ鋳造原型=ロウ原型)の最下部,すなわち頭j買部に作っておく。(7)加熱してロウを排出する以上(4)-(6)の工程もおそらく鋳造坑の中で行われたと思われるが,その近くの工房の中でも行われ得た。しかし(7)以降は確実に鋳造坑の中で進められた。鋳造坑の床に準備した石ないし粘土製の土台の上に鋳型を逆さに置き,坑の側壁につっかい棒を渡して倒れないように固定する。坑の深さは当然〔ヘルメ柱〕の高さ(105cm)以上なければならない。坑の床には鋳型から流れ出るロウを,後で作る仕切り壁の外まで導く通路を作り,仕切り壁の外にはロウを集める穴ないし容器を用意しておく。ロウに着75
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