鹿島美術研究 年報第20号別冊(2003)
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せいかぽん注(1)棟方は自分の作品を「柵jと呼び慣わし、作品名にも頻繁に使用しているため、本論でもこの呼(2)棟方は1942年11月刊行の『板散華』後記でく板画〉宣言を行った。本論では、これ以前の作品名(7) 浜田庄司「作柄人柄」『工雲」第71号、日本民義協会、1936年、19頁。(8)『柳宗悦全集』第22巻下筑摩書房、1992年、75頁。(9) 日本民警館所蔵柳宗悦宛棟方志功書簡整理番号26。(11) 日本民委館所蔵柳宗悦宛棟方志功書簡整理番号55。(3)棟方志功『板極道J中央公論社、1964年、53頁。(4)棟方志功『棟方志功一わだ、ばゴッホになる]日本図書センター、2000年、71頁。(5)佐藤一英「けっぱれ」『佐藤一英詩論・随想、集』講談社、1988年、449-451頁。(6)棟方志功『板画の道』宝文館、1956年、15-17頁。(10)比木喬「第四回『工雲』護者座談舎」『工雲』第78号、日本民義協舎、1937年、72頁。な計画性がうかがわれる。棟方は、戦後、岡本かの子の詩を主題とする〈女人観世音板画巻〉(昭和24年)をはじめ、吉井勇の短歌を主題とする〈流離抄板画巻〉(昭和28年)、前回普羅の俳句を主題とする〈栖震品〉(昭和25年)、谷崎潤一郎の短歌を主題とする〈谷崎歌々板画柵〉(昭和31年)など、俳句や短歌を中心に数多くの詩歌を主題とする作品を制作した。「必然的に慾しいというのではなく入れました。彫らなければならないから彫ったのです」という詩句の文字についても、〈女人観世音板画巻〉〔図21〕では、「文字によって板画が生まれ、文字がこの板画の良さを決定したところまでJ(注目)いたり、〈流離抄板画巻〉〔図22〕では、「その人のもっている句の力、歌の力、詩の力、そういうものを、わたくしの板画の中にあってもらいたい、板画の中に入ってもらいたいという心でつくるのです」(注15)という境地にまで達している。それらの作品では、草花や鳥獣、山河、神仏などのモティーフに、ふくよかな宇果身の女性像も加わって、様一々なイメージが豊かに表されており、詩句の文字が画面に記されているにもかかわらず、詩歌の世界を版画化するというよりも、詩歌を素材に自らの版画の世界を自在に創造しているように感じられる。自由奔放さを増したそれらの作品については今回触れることができなかったが、俳句や短歌が中心となる主題の選択や、さらに多様になるモティーフ、鋭角的な線、幾何学的な文様、華やかな彩色が目立つようになる表現方法、それら相互の関連性などについては今後の研究課題としたい。称を適宜使用した。についてはく版画〉、これ以降の作品名についてはく板画〉の文字を使用した。同日本民義館所蔵柳宗悦宛棟方志功葉書整理番号530同宇賀田達夫『祈りの人棟方志功』筑摩書房、1999年、194202頁。90

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