⑮ 中国・耀州窯青査の系譜的研究研究者:愛知県陶磁資料館学芸員森耀州窯は、宋代・華北の代表的な陶益生産地の一つで、あり、その青空は、オリーブグリーンの美しい柑色と流麗な劃花文、繊細織密な印花文などによって、古くから高い評価を得てきた。中国の青姿は、唐代以前にはi折江省北部の越州窯など江南地域を中心に発展してきたが、華北の陳西省に所在する耀ナト|窯では、唐代晩期頃から越州窯青査の影響を受けた粗質の青査の生産を開始し、五代には天青粕と呼ばれる美しい粕色をもった上質の青査を作るようになった。さらに、五代末から北宋代初期に耀州窯独特のオリーブグリーン色の青査を生み出し、華北における質の高い青姿生産を確立したのである。また、耀州窯青査の意匠や技術は、周辺の窯にも影響を及ぼし、隣接する河南省では、多くの窯で耀州窯青査を写した製品が生産されたほか、北宋末期の汝窯や鈎窯に柚色や焼成技術などで影響を及ぼしている可能性が高い。本研究は、耀州窯青姿の詳細な編年作業と他窯製品との比較を通じて、その意匠・技術的系譜を明確化するとともに、中国の青査発展過程にける耀州窯の位置づけを明らかにすることを目的とする。1 唐代の耀州窯製品中国では、唐代・五代の耀州窯に対して、「耀州」という行政区名が五代初期以前にはなかったことを理由として、窯祉の所在地の地名である「黄壁鎮J窯という名称を用いることが多い。唐代・黄壁鎮窯では、三彩、白紬、黒柏、褐柏、茶葉末柏、白紬緑彩、白柚褐彩、素胎黒彩、黒粕白彩(花束由)、黒紬刻花白彩、青套など多彩な製品が生産された(注1)。この段階の胎土は不純物が多く、灰褐色を呈するため、三彩や白粕姿系では素地の上に白化粧土を施し、その上に施柚する場合が多い。この由化粧の技術は、河南省・陳西省地域の初唐・盛唐期の三彩や白紬姿器で多用された技術であり、黄壁鎮窯はこれらの技術系譜上にある。その開窯時期は現時点ではまだ明らかでないが、中唐から晩唐期の製品が唐代の都・長安域内の遺構や周辺の墳墓から数多く発見されており、長安の北方約80凶という立地を生かして、都へ陶姿器を供給することにより、唐代後半期に大きく発展したと考えられる。特に晩唐期の長安周辺では、確認されている窯杜は黄壁鎮窯以外に達也
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