フイギュラテイヴオプテイカルフイギュラティヴポロックにおいてはオールオーヴァーのボード絵画によって、上に述べられたような形で線描と絵画の統合が為されたが、そこでは実に、伝統的な意味での形態はポーリングの網の目の中に解消されていた。マイケル・フリードはこれについて次のように論じている。1947 50年のポロックのオールオーヴァーのドリップ絵画では、ラインはついに輪郭を描き形体の境界となる役目から解放された。ラインはその形象描写的な特徴を取り除かれたのである。……〈ナンバー1> [{ナンバーlA、1948)]のような絵画では、均質で、全面的で、それと認識できる物体も抽象的な形体も有していない絵画フィールドがあるだけなので、私はそれを「視覚的」と呼びたい。(注8)このように1947年にポロックは、ポーリングの技法とオールオーヴァーなスタイルを以って非形象描写的な「視覚的」な絵画を実現した。しかしながらポロックは翌年、オールオーヴァーのポード絵画の時期の真っ只中で、カット・アウト・シリーズにおいである種の成形作用をすぐに取り戻すことになる。既に見たように、ポロックのカット・アウト作品ではいずれも支持体から半具象的な形体がナイフや撃で切り取られている。フリードはこれを、「オールオーヴァーで視覚的な彼のスタイルを成形作用と結合させる」(注9)ポロックの試みとして解釈する。フリードは〈カット・アウト〉を取り上げて、それを次のように説明している。〈カット・アウト〉ではポロックは、絵具の塗られたフィールドの一部を打ち消すことによって……成形作用を成し遂げている。ここではポロックは、外形がおおよそ人の形をしている図ないしは形体を、オールオーヴァーに塗られたフィールドが先にドリップされた一枚のキャンヴァス[ママ]から実際に切り取っており、それからこの部分をキャンヴァスボードで裏打ちしている。結果、その図はこの世の物体としても平面上の形体としても見られず……むしろ特殊な領域上における視野の不在として見られる。……成形作用は視覚に関してのみ成し遂げられるのである。(注10)マテイスの切り紙絵の美学とポロックのカット・アウトの美学に共通している大きな問題は、上に見たように、新しい手法による新しい種類の成形の探求というものである。1947年に非形象描写的なスタイルを実現したポロックが1948年に新たに成形作用を求めた時、彼は『ジャズ』を通してマティスの切り紙絵の美学を吸収し、それを32
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