(4) 台座(5)脇侍像と造像記ある。偏祖右肩式着衣に覆肩衣を着ける形式〔図5〕は、北貌以来見られる双領下垂式服制という、肌の露出を嫌う漢民族の美意識に沿った着衣方法に近いが、触地印像の服制としてそれらは少数にとどまっていることを指摘しておきたい。触地印像の台座には、中尊の半円形台座と脇侍の台座が蓮茎でつながる形〔図2、6〕が多い。しかしこの半円形部分には、図2のように現状では何も刻まれていないように見えても、図6のように蓮弁を彫り出すか描いていた可能性がある。その上で台座の形式を分類すると以下のようになる。触地印「阿弥陀J像52例では、蓮茎で繋がる半円形蓮華座〔図2〕19例、束腰円座(敷茄子部分が円形の台座)11例、束腰円蓮座7例、仰覆蓮束腰円座〔図4〕10例、半円座2例で円座系が49例もあり、ほとんどが円座系に坐る。一方、方座、束腰方座、仰蓮方座はそれぞれ1例のみに過ぎない。この円座系台座の多さは無銘触地印像にも認められ、蓮茎で繋がるものも含む束腰円座157例、束腰円蓮座82例、半円形蓮華座86例、仰覆蓮束腰円座72例、仰覆束腰円座6例、半円座13例、半円蓮座15例、仰覆半円座5例、仰覆蓮半円座7例の合計443例で、これは無銘触地印イ象台座539例の約82%を占める。また無銘触地印像の方座系台座は、方座10例、束腰方座11例、覆蓮束腰方座4例、仰蓮束腰方座l例、仰覆蓮束腰方座6例の計32例で約6%に過ぎない。八角座系は束腰八角座17例、束腰八角蓮蓮座3例が挙げられる。「阿弥陀」像の片方に、「地蔵」あるいは「地蔵菩薩」銘を有する菩薩形の遊戯坐像あるいは立像、またもう片方の脇に「観音J、「観音菩薩jあるいは「救苦観音」銘をもっ菩薩形立像を配する三尊形式が5例有り、このうち3例の中尊は触地印像である。また無銘触地印像の左右に菩薩形遊戯坐像と菩薩形立像の脇侍が付く形式が14例認められる(注9)。さらに、「阿弥陀」像が「観世音菩薩」と「大勢至菩薩」を脇侍とするのは3例で、いずれも中尊は触地印像ではない(注10)。「阿弥陀j像272例のうち142例が二脇侍像を伴うにもかかわらず、脇侍の尊名を具体的に示すのが上記7例のみというのは興味深い。この他の135例では単に「阿弥陀仏像二菩薩像」「阿弥陀像一鋪Jのような造像記にとどまっている。このように具体的な尊名を記さない造像記の傾向は唐代龍門石窟全体でみられる。すなわち造像記1389例のうち、「石像」「一仏二菩薩像」、あるいは寄進者名等のみで尊名を欠く銘が827例約60%を占める。座9例の計26例で無銘触地印像台座の約5%、他に束腰六角座l例、束腰上方下半円-433-
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