りにあらわされた菩薩が十体、蓮華座に坐す。それらのうち中尊の左右前方に坐す二菩薩については観音・勢至かとも目されるが、残念ながら今回の地上からの観察では、宝冠の標l臓の有無を確認することはできなかった（注1）。なお、これら前方左右の二菩薩と他の八体の菩薩坐像とでは、大きさも等しく、頭光の有無といった図像的区別も認められない。それら菩薩坐像群の外側には、蓮華座上に立つ菩薩像が左右に各々四体ずつあらわされるが、向かつて左側は画面の損傷が著しい。そのさらに外側には、鳴尾をいただいた屋根をのせ、基壇上に立つ建物が左右に各一棟あらわされる。阿弥陀仏の上部には簡素な大ぶりの天蓋があらわされ、その左右両端には天衣をまとった飛天が浮かび、天蓋の上部には沙羅樹のような樹木が葉を茂らせており、そこに葉を蓮華座のようにして坐す仏六体があらわされる。樹葉の向かつて右側には、空に浮かぶ笠模と琵琶、天衣を上方に棚引かせた飛天が配される。左右の楼閣の上部には、屋根の背後に菩薩が小さくあらわされ、その上空には飛天が飛ぶ。宝池に目を転じると、中央の仏前には蓮華座にのる博山香炉があらわされる。博山香炉の蓮華座からはパルメット状の葉のようなものが伸び、香炉の左右には化生像二体が配される。この香炉の周囲の池中には、開敷蓮華から上半身をあらわし合掌する化生像二体、頚の長い水鳥七羽があらわされ、往生者とみられる池中を泳ぐ人物像も二体みられる。宝池の左右下端には積み重なる岩が彫られ、そこに半蜘踏み下げの姿勢で坐す人物や、両手両足を地につけた人物の背中に別の人物が手をあてる様があらわされている。明かり窓上部の小区画に移ると、向かつて左側（東側）では柱間五聞の吹き抜けの建物の中に、中央の聞には禅定印を結んで坐す仏と合掌して立つ脇侍菩薩があらわされ、他の柱聞には菩薩が各二体ずつ配されている。ただし、現状では建物の屋根は確認できない。向かつて右側（西側）の区画では、二本の柱の聞の林上に二仏が並坐し、その周囲に菩薩が六体あらわされる。この二仏並坐ということから、本図を『法華経』見宝塔本にもとづくとみる見解がある（注2）。柱の外側にも菩薩立像が配されるが、向かつて右端には洞穴内で禅定する仏があらわされ、その上部には樹葉が彫られている。こちらも屋根は確認できないが、向かつて左側の建物の天井が水平であったのとは異なり、こちらの右側の建物では、天井が弓なりに湾曲している。第二窟本来は第一窟と同様、南面して聞かれた中心柱窟の入口上部のT字状区画に、西方浄土の情景と左右の小景が刻まれていたが、そのうち中央の長方形の区画は切り取られてフリア美術館に所蔵されている。第二窟は全体に破壊が著しく、中心柱を含め壁面の大部分が削り取られており傷ましい姿を呈しているが、西方浄土変が刻-441-
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