基本的器種の割合が少なく、日本とヨーロッパ.で、は、明らかに器種構成が異なっている。〈器形〉器形については、袋物では菊花や龍を飾りとして貼り付けたり、壷や瓶の左右の耳を蝉や龍などにかたどるなど特徴のあるシルエットを作りだすものや〔図6〕、布袋や龍の形をした水注〔図7〕、捻花形の変形皿〔図8〕など装飾的な器形が多い。日本の伝世品については、山水や秋草などの濡酒な染付文様が引き立つようなシンプルな器形が多いことから、日本とは異なる傾向が見られる。〈文様〉次に、文様についてであるが、自然を描いたものとしては山水、雲、波、富士山などが見られる。植物では、花鳥、草花、秋草、鉄線、松、竹、牡丹、四君子、菖蒲、夜桜、菊、芭蕉、唐草などがある。動物では、龍、獅子、膿麟、虎、犬、牛、狐、猿、蛇、雀、亀、栗鼠、鼠、種類が特定できない鳥、鶏、鴨、鶴、蟹、鯉、鯛、蛸牛など。昆虫では、蝶、蝉、バッタ。人物では、六歌仙や武者、婦人、唐子、布袋、三番史、琴高仙人など。幾何学模様として、紗綾文、亀甲文、蓮弁文、雷文、丸文、七宝文、リンボウ文、青海波文などが見られる。植物の文様は、種類も多いが描かれる頻度も最も高い。また動物では、龍や獅子などを別にすると、犬、栗鼠、鶏、蟹、亀、鴨、鯛など小動物が多い。六歌仙や武将、富士山といった日本的な文様も見られる。ヨーロッパにおけるジヤボニスムの重要な側面として、日本的自然主義の導入が指摘されている(注34)。それはヨーロッパの絵画や工芸品に、日本からの影響で草花や鳥、小動物といった自然主義的モチーフが多い点に現れているというものだが、三川内焼にも、前述のような自然主義的モチーフが多いという共通点が見出せる。また、六歌仙や武将、布袋など日本的要素の強いモチーフも見られる。ところが前章でも触れたように、ジャポニスムが盛期を迎えてから三川内焼輸出の盛期が始まっていることから、三川内ではジャポニスムの流行に先駆けてというよりは、むしろ消費地のニーズに合わせてジヤボニスム的要素をとり込んだ意匠選ぴが行われたと推察される。〈装飾技法〉装飾技法については、染付が圧倒的に多いが、他に瑠璃柏、青磁粕、錆柏、白磁、あるいはこれらを組み合せたものがある〔図9〕。また、上絵付も見られる。赤と金を多様した華やかなもの、それに加え緑、黄、水色、紫、桂など数多くの色彩で賑やかに飾られたものも見られる〔図10〕。-485-
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