鹿島美術研究 年報第20号別冊(2003)
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2.図版について「コケイドjと「デクベJで分類される扇は、コレクションの中には存在しなかった。「扇面主題」は、主に扇面表にあらわされているモティーフをさしている。ただし、〔図7〕は、図版選択の都合により、扇面裏のモティーフではあるが、「廃嘘画jの作例として紹介している。「用途」は、特別な用途のために製作された扇を分類するために設けた。掲載した図版は全て神戸ファッション美術館の収蔵品である。本来は、扇面の裏表とも掲載すべきであるが、特に素材や装飾に触れない場合は未掲載とした。資料解説〔図1〕扇ブリゼフランス1710年頃L/210mm W /35mm 象牙に手彩色18世紀の初めに製作された扇は、後のロココ時代のものに比べ、長さが200〜210cmと小さい。骨をリボンテープでつなぎ、スライドさせて開く扇をブリゼと呼ぶ。このブリゼ・ファンには、18世紀に人気のあった牧歌的な風景が中央に描かれ、その左右と下部分にシノワズリーのモティーフがみられる。1720-30年にも類似した作例はみられるが、扇面が聞く角度によって、1710年頃の製作と推定される。骨に透かし彫りがほどこされ、要部分には瞳甲が用いられている。〔図2〕扇ブリゼフランス1720-30年頃L/210mm W /35mm 象牙に手彩色1720 30年頃に製作されたルイ15世時代の扇で、‘ヴェルニー・マルタン’と呼ばれる独特の漆技法が用いられた扇。マルタン兄弟が発明した漆技法とされているが、技術的なことは未だ解明されておらず、この作例が見られるのも1720-30年頃と限定され、現存する作例もそれほど多くはない。中央にはプットーと女性たち、扇面下にはシノワズリーのモティーフが見られるが、特に18世紀前半の扇には、このシノワズリーのモティーフが扇面や柄の部分にあらわされていることが多い。〔図l〕とサイズは同じであるが、扇面の開く角度が大きくなっている。同様に骨に透かし彫りがほどこされ、要部分には篭甲が用いられている。〔図3〕扇フォールデイングフランス1770-75年頃L/275mm W /35mm 面紙に手彩色柄と骨に扇面を貼り付けて製作された扇をフォールデイングと呼ぶ。扇面は表のみ柄と骨一象牙に彫刻と金彩-493-

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