VEUEROYで製作された扇であることがわかる。扇面の絵は、画家ペルネによる。カテドラル型の骨がリボンテープでつながれたブリゼ・ファンで、1830年頃の典型的なデザインを示している。黒地と茶色地のメダイヨンには、古代ローマ風の人物が白で描き込まれている。全体に草花文の金彩による装飾がみられる。ファン・ミュージアムにも同タイプの扇が多数所蔵されている(注5)。この扇のように、蝶番部分がクローパーの形をしている場合、フランス製である可能性が高い。19世紀初頭に小型化した扇は再び大きくなり始め、それとともにまたフォールデイングの時代へと移行していく。〔図7〕扇フォールデイングフランス1830-40年頃L/285mm W /50mm 面一紙に手彩色柄と骨一真珠層18世紀中期から後期にかけて製作された扇の非常に丁寧なコピーで、ロマンティック時代にはこのようなロココ時代の扇のコピー製作がさかんに行われた。扇面表は雅宴画のモティーフで、裏にはT(J?)のエンブレムと花綱が描かれている。透かし彫りをほどこした真珠層の絵と骨には、金彩による装飾が見られる。ロココ時代のものに比べ、やや扇面の開く角度が大きく作られており、ここでは180度まで聞いている。〔図8〕扇フォールデイングフランス1860-70年頃L/280mm W /25mm 面白鳥の皮に手彩色柄と骨真珠層に金彩クリノリンの時代、スカートの広がりがどんどん増していったように、扇もその角度を広げ、同時に扇面も大きくなっていった。この扇は表に女神とプットーが配され、裏にはロココ風の衣装を身に纏った男女の姿が描かれている。扇面のサイン、上質の真珠層、柄と骨の精巧な細工から、フランスの高級扇メーカー、ドュベェルロワDU-〔図9〕扇フォールデイングフランス1889年頃L/350mm W /35mm 面紙にリトグラフ柄と骨一木製パリの菓子店‘ボンボン・シロダン’BONBONSSIRAUDINの広告扇で、1889年のパリ万国博のために製作された。広告扇は、たいていは安価なプリントの扇面と木製の骨によるもので、19世紀後期から広告媒体として作られるようになった。このタイプの広告扇は、主に特定の顧客に対して贈り物として配られた。広告扇の製作は、20世紀に入ってますますさかんになり、レストラン、パ一、ホテル、百貨店、様々な業種の商品広告などのために、ヴァリエーションに富んだ作例が残されている(注6)。ここでは、ボンボン・シロダン店の店頭の様子やオペラ座や往来の人々など、パリの街中が描かれているが、当時流行のパッスル・スタイルが女性の衣服に認められる。-495-
元のページ ../index.html#505