Fhd 〉王代美術の展開J(モンゴル近代絵画展カタログ所収)モンゴル美術史の研究者としては、美術家でもあるN.ツルテム氏(19232001)、その娘のウランチメグ氏が知られるが、両者とも対象が古代から現代までと幅広く、近代美術に焦点をあてているわけではない。非政府組織として活動しているが、社会主義時代は国の中に組み込まれた組織であり、すべての芸術家は加入が義務づけられていた。現在は、所有するギャラリーとスタジオを提供するなどして、組合員の活動を支援している。スタジオの倉庫には、組合員の作品が約350点ほど保管されており、今回そのほとんどのデータを収集することができた。り(1921年以前の作品は国立ザナパザル美術館の所管となっている)、常時コレクションの展示を行っている。署名、添付された作品カードを収集した。べて近代美術館所蔵)材質技法はすべて絹・錦によるアップリケ、掛幅装。グルドルジ、マジク「スフパートル」、1958、120×165ツェルマー「女性たちの労働」、1963、199×171ツェヴェグジャヴ、タイトル不詳、1963、72×109ツェレンフー「集会j、1967、70.5×101.5 ノロンホー「平和の契約」、1967、109×81.5 ヤダムスレン、ルーニャ「召集」、1967、84.1×63.4ハンドスレン「学べ、また学べ」、1969、185×137ヤダムスレン、ルーニャ「多くの民族」、1969、184.3×175.4〔図l〕ロヴサル、ツェルマー「私たちの母国」、1971、189×289.5〔図3〕ツェレンフー「刺繍する女性」、1971、124.8×85.8ツェレンフー「スフパートルj、1971、156.3×122.5〔図5〕(1) ツルテム・ウランチメグ「モンゴル遊牧民族の美術」、拙稿「蒼天と草洋の絵画ーーモンゴル近(2) モンゴル芸術家組合は、1942年に設立された、モンゴルで最も大きな美術団体である。現在は、(3) 1989年に設立されたモンゴル国立近代美術館は、1921年以降の美術作品を約4000点所蔵してお(4) 文字データとして、全作品について作家名、作品名、制作年、サイズを、画像データとして全図、(5) アップリケ作品全15点のデータを記しておく。(制作年)II買、※印のみ芸術家組合所蔵で、他はす近代のアップリケ作品を生み出した背景は、仏教絵画の伝統、乾燥性の気候、杜会主義国としての歴史という、他の地域にはない歴史的、気候的な要因が大きい。しかし、ヤダムスレン、センゲツォヒオらがモンゴル画復興を目指した画家であることから、初期の作品では敢えてモンゴル画(仏画)の伝統を意図的に色濃く打ちだそうしており、次第にそれがプロパガンダを目的とした華やかで、キッチュな作品へと変化していったのではないだろうか。このアップリケ作品は、男女での共同制作であり、ジェンダー的な点からも考察が可能であるだろう。今後更に研究を深めて、モンゴル美術史におけるアップリケ作品の意義や特性を明らかにしていきたい。
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