速Eメールを頂戴し、Fundaci6nCarolina (現国王カルロスがニューヨークに設立したって、目や心を刺激し、目や心が潜在的に有する、事物の概観の移ろいゆく側面を捉える能力を引き出すもの」であった。そしてブラウン教授はこう結んでいる。「ベラスケスとイタリア絵画との関係は、論争であるのと同じくらい対話でもあった。イタリア・ルネサンス絵画の規範と伝統というある共通の前提が存在するということでは、両者は同意していた。しかしながらベラスケスは議論の中で彼が弱点だと信じるものを感知し、絵画が知性と感覚的経験との聞を仲介する方法を変えたいという望みのうちに、それらの弱点を断固として活用しようとしたのである。」以上、ブラウン教授の講演は従来の、「ベラスケスのイタリア化Jという固定観念を打破せんがために様々なデータや通念を再検討しつつ、新しいベラスケス像を見出そうとしている。そこには未解決の問題をいくつか残しつつも、多くの聴衆に強い感動を与えたようである。明快な通訳を務めた上智大学専任講師松原典子氏にも深く感謝する。翌日日に行われた国立西洋美術館の講演「プラド美術館ーコレクションの中のコレクションー」は、開催中の『プラド美術館展』(3月5日6月16日)に向けられたもので、ハプスブルクからブルボンまで、王室絵画コレクションの形成を歴代国王の趣味と収集の変遷に沿って、クロノロジカルに辿ったものである。これに関しての詳しい報告はまた別の機会に譲りたい。ブラウン教授は、初来日ということもあって、日本文化やメガロポリス東京の巨大さに圧倒されたようである。また日本において、スペイン美術研究がスペイン・ラテンアメリカ美術史研究会を中心として活発に進められつつある姿に驚き、かつ満足された。それは我が国での美術史研究全体にも言えることであろう。帰国された後、早財団で、スペイン・イベロアメリカ研究センターの母体)が資金を提供し、スペイン側と日本側とでスペイン美術研究の現状を討論する場(encuentro)の開催が提案されたことを付記し、報告書を終わりたい。注:JonathanBrown (with Carmen Garrido), Velazquez. The Technique of Genius, Yale University Press, 1998 ; Spanish edition, 1998. -565-
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