鹿島美術研究 年報第20号別冊(2003)
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(2)海外派遣① ニューヨークにおいて開催される「飾り展」および付随する会議への出席のため期# 18 源氏物語画帖(アーサー・サックラ一美術館)これは土佐光信筆として最近注間:2002年7月14日〜7月20日(7日間)派遣国:アメリカ合衆国報告者:国華社主幹辻在米「かざり」の美術研究ニューヨークにあるジャパン・ソサイエテイ・ギャラリーの要請を受けて、2002年秋から年末にかけ同館で行われる「かざり」展の監修を引き受けたのは、1999年のことである。以後、展覧会の準備・打合せを兼ねての数回の渡米の機会に、ニューヨークその他の日本美術コレクターや美術館を歴訪し、「かざり」に関するコレクションの調査、研究につとめた。結果は驚くべきもので、質、量とも充実した「かざり」、すなわち日常生活とむすびついてそれを活性化させるための装置としての日本の装飾美術のコレクションがアメリカに存在することが明らかとなった、従来それらのほとんどは、公開される機会もなく、埋もれたままになっている。今回の[かざりJ展は、それらの存在を知らしめる絶好の機会となるだろう。今回の「飾り」展は、ジャパン・ソサイエティに引き続いて、2003年2月から大英博物館でも行われた。総数184点にのぼる出品作のうち、約半数は日本からの出品であるが、その他はアメリカおよびイギリスにあるものの公開である。米英にあるもののほとんどが従来非公開か欧米初公開のものだとも特記されねばならない。私にとってそれらは新たな研究資料との遭遇を意味した。それらのなかから注目されるものを以下に列挙する(#はカタログの作品番号)。#2 四季竹図(クリーブランド美術館)2幅これは水墨画だが、大和絵の四季景物画の画題のもとを考える上で重要な作品。出光美術館の2幅と合わせて4幅がひさぴさに揃い、大英博物館の#3「四季日月図扉風」の上に掛けられ、室町時代の花座敷の再現に役立つた。目された華麗な装飾画だが、ニューヨークで公開されるのは初めて。#24 紅葉・桜図扉風六曲一双(ダンジンガー・コレクション)所有者ダンジンガ一氏は茶道具のコレクターとして知られるが、このような華麗な扉風を持つとは意外だった。同画題の扉風は日本の根津美術館にもあり、根津本の方が年代がいくらか遡る惟雄576

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