が、D氏本の紅葉の画面をいっぱい燃え上がるような熱情は強く印象に残り、まさに「かざりJ展にふさわしい作品となった。クションとしては秀逸なものの監修をつとめたニコール・ルーマニエールさんが見出したもので、表向き、裏向き二つの花弁をつなげた不思議なデザインをしている。アメリカ人の感覚が見つけた「もう一つの日本美」とでもいうべきもの品だが、今回の展示品のなかでは、とりわけ力強く、カラスの野卑な生態が、金地と黒とのコントラストによって、鮮やかな装飾効果に転化しているのが見られた。群鵜を主題とする扉風は、醍醐寺三宝院その他にあるが、これほど生命感を感じさせるものはなく、在米装飾扉風中の異色作である。の脇に置いた。欧米では不吉な鳥とされるカラスが、同種のl}'\I}'\鳥とともに逆に近世日本では愛すべきモチーフとして流行していたことを示したかったのである。ろん日本にもあるが、この八枚の小皿は、軽快で変幻の味をもっ乾山デザインの真骨頂を示している。全体のダイナミズムの中で異色の存在であった。品とくに焼物については、ニコールさんと出光美術館の荒川正明氏の選択にまかせたのだが、このような従来の焼物の展覧会では滅多にお目にかかれなかった興味ある傑作を見出すことになった。細やかな毛描による兎の肢体と写実的な顔を円の中に収めて染付し、縁の一部を帽子の庇のように伸ばしてそれが三日月をあらわしている。三日月の影の部分に兎が住むということだろうか。皿のくぼみが兎の身体のふくらみの表現に生かされているあたりも心憎い。セットとしてつくられた同じ意匠の皿のうち数点は日本に残り、一点が大英博物館に渡った。#44 織部向付(ウェーパ・コレクション)桃山時代の織部の佳品、アメリカのコレ#48肥前焼き、双菊文皿(メトロポリタン美術館)これは、私とともに「かざり展」#54 群鵜図扉風六曲一双(シアトル美術館)これも展覧会に出品されること稀な作#55仁清作・l!fl)l;\.鳥文様茶入(アジア・ソサイエティ)は、シアトル美術館の扉風#68仁清作・四季草花文素焼皿(ダンジンガー・コレクション)同種のものはもち#79 能装束・狩衣(メトロポリタン美術館)の整然とした有職模様のデザインは、#83 月に兎文様鍋島皿(大英博物館)私はおもに絵画と染織の一部を監修し、工芸#85 現川焼・蓮花文様口器(サックラー・コレクション)これもニコールさんの眼が「発掘Jした懐石用の鉢、植物の根のような蓮の葉脈の細綴な表現が特殊である。#94 立葵御所車文打掛アメリカに渡った近世の染織は、この展覧会の準備に関わ577-
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