鹿島美術研究 年報第21号別冊(2004)
14/598

石膏地に直接箔の貼られている作品以下、フィレンツェ、ルッカ、ピサ周辺とスポレートにある作品のうち、ボーロが塗布されず石膏の地塗りの上に直接金箔、銀箔の押されている例を示す(注15)。銀箔およびメッカの施された作品は、3、5、16番である。ただし16番のキリストの光輪は金箔であり、重要な箇所には銀箔ではなく金箔を選択している。メッカとは黄色く透明な一種のワニスであり、銀箔の上に塗布して金色に見せるものである。しかし銀は酸化して黒変しやすくワニスも年月とともに暗色化するため、現在は灰色、褐色を呈する。美術館に展示された状態の観察でボーロがないように見えるものでも、詳しい調査なしには確信がなく、以下に記さなかった作品もいくつかある。ボーロの層が薄いこともままあり、この傾向は時代を遡るほど強くなるように思われる。またボーロの色は、オレンジ色から暗い赤褐色まで様々な色調がある。〈フィレンツェ周辺〉サンタ・マリア修道院、253X230cm(注16)(注17)フィレンツェ市文化財監督局、98X124cm(注18)(注19)ポ、サン・レオリーノ教区教会、パンツァーノ(グレーヴェ・イン・キアンテイ)、95X155cm(注20)〔図5〕マエトスロ・デッラ・サンタ・アガタ(?)、サンタ・マリア・デル・カルミネ聖堂、ブランカッチ礼拝堂、242X112cm(注21)ラリー(ロンドン)、92.5Xl85cm(注22)局、ヴィッラ・デイ・カザーレ、グレーヴェ・イン・キアンティ、180X78cm(注23)1. 1134年頃、《ロザーノの十字架上のキリスト》、マエストロ・デイ・ロザーノ‘2. 1100年代末、〈十字架上のキリストn.432》、ウフィッツィ美術館、377X23lcm3. 1200年代半ば、《大天使聖ミカエル》、マエストロ・デイ・ヴィーコ・ラバーテ、4. 1240年頃、《十字架上のキリストn.434》、ウフィッツィ美術館、250X200cm5. 1260年代、《王座の聖母子と聖ピエトロ、聖パオロ〉、メリオーレ・デイ・ヤコ6. 1200年代後半、《玉座の聖母子と二人の天使(マドンナ・デル・ポーポロ)》、7. 1260年代、《玉座の聖母子》、マルガリトーネ・ダレッツォ、ナショナル・ギャ8. 1200年代、〈聖母子と受胎告知》、マエストロ・デイ・グレーヴェ、文化財監督-5-

元のページ  ../index.html#14

このブックを見る