鹿島美術研究 年報第21号別冊(2004)
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129.当作品の修復において、キリスト背後のタペストリー模様部分の金箔は、緑土の上に貼られていることが分かった。同じくジョット派のオンニッサンティ聖堂の《十字架上のキリスト〉(1315年頃、485X380cm)は、現在フィレンツェ国立修復機関にて修復中であり、タペストリー模様の金箔は、白い石膏地の上にミッシォーネでつけられている(修復師パオラ・ブラッコ氏より)。二作品とも、金地背景と額部分の下地にはボーロがある。f!-0) Miklos Boskovits前掲書(注37)pp. 152-157. (41) 著者はフィレンツェ国立修復機関にて、実体顕微鏡を用いてこの二作品を観察する機会を得た。Angelo Tartuferi (a cura di)、Giotto,Bilancio critico di sessant'anni di studi e ricerche, Prato : Giunti, 2000, pp. 178-179. (42) 参照:DillianGordon前掲論文(注38)、DavidBomford, Jill Dunkerton, Dillian Gordon, Ashok Roy 前掲書(注4); Angelo Tartuferi前掲書(注41)pp. 182-186. Dillian Gordonの論文によるとこの作品には緑土が使用されているとのことだったため、著者はヘッドルーペをつけて観察した。しかし、金箔の下に垣間見られたのはほとんどが赤褐色であり、緑色はわずかだった。1900年代初めにルイジ・カヴェナーギによる修復を受けていることも考慮にいれつつ、より精密な調査が必要である。(43) 前掲書(注21)参照。(44) Marco Ciatti, "Some Observations on Panel Painting Technique in Tuscany from the Twelfth to the Thirteenth Century", IIC Congress, Painting Techniques, History, Materials and Studio practice, Dublin, 1998, p. 2. -11-

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