特に今回の調査対象とした資料を人物、風景、静物など画題別に分類して提示するなどして、広く評価を仰ぎたいと考える。本稿では静物画について言及しなかったが、それらにも高い描写力が認められる。また、横山松三郎の法事や「第一内国勧業博覧会開場式当日」と題されたスケッチなども、時代の証言者として記録画という意味でも重要であると考えられる。彼らの確かな描写力は、私たちにさまざまな示唆を与えてくれることだろう。本研究では、亀井至ー、竹二郎兄弟の作例を提示し、彼らの活動を明らかにすることによって、彼らの美術史上での位置づけをおこないたいと考えてきたが、いまだ研究途上であり、彼らの位置を定めるところまでは達してはいない。亀井兄弟ばかりでなく、いわゆる黎明期の画家たちの活動の全貌は解明されていないが、近年の地道な調査研究によってそうした画家の活動がわずかずつではあるが明らかにされるとともに、これまで見落とされがちであった側面にも目が向けられるようになりつつある。亀井兄弟の作品および彼らの活動についての調査研究の継続をはかり、今後、より広い視野をもって近代美術史を再考する端緒としたい。-324 -
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