ド・ダ・ヴィンチに関する書籍が翻訳書•それ以外共に最も多く、次いでミケランジ続いて本研究では、雑誌記事だけでなく単行本の刊行状況についても調査を行った。その調査結果として、1930年〜1949年の20年間に刊行されたルネサンス関連書籍を〔参考表〕に記載した。なお、管見に入った書籍のすべてを列挙することは紙幅の関係上不可能だったため、〔参考表〕には主に総論と美術関係の文献を中心に記した(注5)。〔参考表〕に記載した調査結果から、1930年代末〜40年代初に非常に多くのルネサンス関連書籍が刊行されていることが明らかになった。翻訳書は1941年〜43年頃に最も多く刊行されたこと、翻訳以外の書籍は1939年頃〜43年頃にかけて刊行書籍が増加し、敗戦前後(1945■46年)に減少した後1947年頃からまた増加していったことが判明した。翻訳書では、大正期に刊行されていたウォルター・ペーター、ヤーコプ・ブルクハルトの代表的なルネサンス論の新訳や改訳版がこの時期に刊行されている。他にも、バーナード・ベレンソン、ハインリッヒ・ヴェルフリン(注6)の研究書等、重要な著書が出版された。特定の美術家についての書籍としては、レオナルェロに関する書籍が多く刊行されていたようだ。また、荒城季夫『美の復興イタリャルネサンスの芸術』(青磁社、1944年9月)や、柳亮『レオナルド・ダ・ヴィンチ』(春鳥会、1941年6月)、同『ラファエルの素描』(創芸社、1944年4月)等のように、それまでフランス近代美術の紹介・批評を担っていた美術批評家たちによる、イタリア・ルネサンス美術関係の書籍が刊行されたことも注目される。日本における本格的なルネサンス美術研究は、矢代幸雄によるボッティチェリの研究書(注7)がロンドンで出版された1920年代半ばには胎動しつつあった。その後ひき続いて本研究の対象期間である1930代〜40年代には、美術史家の摩寿意善郎による豪華な研究書『サンドロ・ボッティチエルリ』(アトリエ社、1942年10月)や、レオナルド・ダ・ヴィンチ研究者としても著名な科学史家の加茂儀ーによるレオナルド関連の翻訳文献等、戦後に本格的な研究活動を行う研究者の初期の仕事が発表された。第二次大戦下のこの時期に重要な翻訳、邦文の研究書が出揃ってくることで、戦後の日本における本格的な西洋美術史研究の土台が築かれたと言えるだろう。フランス近代美術からの脱却、及び枢軸同盟上述のような第二次大戦下の美術ジャーナリズムにおけるルネサンスヘの関心の高まりは、明治以来フランス近代美術の強い影響の下に形成されてきた日本近代美術を相対化しようとする試みとみなすことができる。ことに、1940年のフランスの降伏はこの状況に拍車をかけた。西欧美術史の「伝統中枢」が「ギリシャから、ルネッサン-392 -
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