鹿島美術研究 年報第21号別冊(2004)
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(3) 舞楽面遺品の概要先述のように、田邊氏の「舞楽面遺品一覧」は、全国に分布する舞楽面の全体像を把握する上で、極めて重要な研究成果である。本表は、1970年の『三浦古文化』(注国立能楽堂開催の『先行芸能の仮面』展図録に載せられた表を参照した(注12)。本研究は本表の補完を目指すものであり、一覧に記載された個々の作例の現存を確認することを主眼とし、必要に応じて資料を追加するという作業を進めた。いまだ、現存遺品の全てについて逐一確認できたわけではない。しかしながら、田邊氏の表に提示された494点の遺品に、80点あまりの新たな資料を加えることができたことは大きな収穫であったと考える(注13)。今回、収集した画像資料を全てここに添付することは、分量の問題があり不可能である。よって、〔表1〕から〔表3〕までの文字資料を用いて、研究成果を報告したいと思う。〔表l〕舞楽面所蔵寺社一覧は、国内および海外の舞楽面を所蔵する寺社や美術館などについて、所蔵仮面数とともに一覧に表示したものである。ここに掲載した寺杜の他にも、東北地方を中心として、舞楽系統の芸能を今に伝える寺社があり、遺品の存否を確認する必要があるだろう。しかしながら、主要な形式を確認できる段階には到達したものと考え、本稿では、現時点での調査・研究結果に基づき、各種の舞楽面の形式を分析していくこととする。(4) 舞楽面の形式伝播・仮面の種類別の変化陵王に関しては、従来から2つの型があるといわれていたことは先述したとおりであるが、その他の舞楽面についても、これまで様々な分類がなされてきた。陵王の形式については、以前に論じたことがある(注14)ので、ここでは簡単な概略を示すに留める。なお〔表2〕陵王面分類表は、拙稿で示した分類表の簡略版である。まず、特定の部分を取り上げて個々の作品を比較した結果を受け、合計6形式に分類した。そして、仮に〔図l〕広島県・厳島神社陵王面の形式1、〔図2〕神奈川県・鶴岡八幡宮陵王面に代表される形式6と称した2つの形式については、原型の相違を感じさせるような、対極的な特徴を持つことを明らかにした。陵王に見られる極端な形式の違いは、他の舞楽面にも見ることができるのだろうか。例えば納曽利について、野間清六は次のように述べる(注15)。11)に掲載された後も、修正を加えつつ度々発表されてきた。本研究では主に1984年、-436 -

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