鹿島美術研究 年報第21号別冊(2004)
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前5机紀にフェニキア人によって建設されたといわれており、その後、紀元前46年に口おり、1995年からは同大学の「古代ローマ帝国の属什1レプティス・マグナ考古学調査の団長」に任命され、現在もリビア政府の支援を受けて、現地において発掘調査を進め文化財の整備修復にも取り組んでいる。今回の国立西洋美術館で開催されている「古代ローマ彫刻展」は“人は現世に何を求め、何を残そうとするのか?”という人類にとっての永遠のテーマを、600年にもわたる古代ローマの隆盛から発展、衰退までの歴史をたどりながら、胸像やレリーフなどの肖像彫刻によって解き明かそうという展覧会である。そこで本シンポジウムでは、ローマ帝国の出現こそが様々に異なった文化の要素を吸収しながらも地中海域における近代西洋人たちの発展の基礎を築いた高度な文明の発達を決定づけた主因であるといわれていることを検証するために、ローマ帝国が吸収した異文化の一つの発信元である北アフリカの属州レプティス・マグナについて、そしてこの属1-1-1生まれながらローマ皇帝にまでなったセプティミウス・セウェルス(在位193-211)一族をに、歴史的背景は勿論、その時代の美術や建造物を、さらにはローマ帝国との関係までをムッソ教授に講演してもらうことになった。地中海沿いにローマ帝国最大の遺跡を現存していることからもうかがえるように、にとって非常に重要な属小卜1であったレプティス・マグナは、おそらく紀元ローマ帝国に併合されたが、地中海の商港としてアフリカの物産をヨーロッパなどに運ぶ中継貿易で大いに繁栄していたとのことである。現在のリビアの首都トリポリという名の因となった三つの古代都市の一つであって現地名はレブダという。今も地中海沿いに残る遺跡の発掘調査は全体の半分も終わっていないといわれるが、ムッソ教授は1995年以来今なお一年の大半をこの地で、自らが指揮をとってその遺跡発掘調査に従事しているそうである。国立西洋美術館の展覧会々場には同時代人の皇帝観を反映している皇帝たちの肖像彫刻も多く展観されている。そこで先ずイタリアから招聘したもう一人のシンポジウム参加者エウジェニオ・ラ・ロッカ氏(ローマ市考古財監督局総監、ローマ“ラ・サピエンツァ”大学教授)によるトラヤヌス帝時代、次いでムッソ教授によるセウェルス朝時代についての基調講演が行われた。「トラヤヌス帝とローマにおけるその公共記念建造物」と題してトラヤヌス記念円柱を中心に語ったラ・ロッカ氏に対して、ムッソ教授の講演では現実的で憔俗的なローマ人杜会であったといわれている古代ローマ帝国が地中海周辺の属J‘卜1に及ぽした影評の大きさを考慮するとき、またその逆も、580

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