鹿島美術研究 年報第21号別冊(2004)
594/598

の同化プロセスは、アウグストゥスによってなされたアフリカ地域の再編から始まったが、その原動力はカルタゴを起源とする属小li都市の人々であったこと、またここには確かな経済力と膨大な財産が集まっていたため、民間の特権階級に支配されていた都市の公的シナリオもセプティミウス・セウェルスの即位によって根本的に変わっていくことになった、とムッソ教授は指摘する。ス帝時代の建造物”に対して筑波大学で建築史を含めた建築学およびデザインを講じている日高健一郎教授によるコメントがあり、また日本学術振興会特別研究員で東京大学非常勤講師でもある芳賀京子氏が基調講演でのトラヤヌス帝時代とセウェルス朝時代を補完する意味で共和政末期から帝政初期の美術について語った。さらにモデレーターを東京大学小佐野重利教授に、4人によるパネル・デイスカッションが行われた。このシンポジウムヘの参加、聴講に関しては、西洋美術館側で希望者を募ったところ、定員に対して倍以上の応募者があったとのことで、会場にはこれまでの考古学講演会でもお馴染みのとりわけギリシア・ローマ美術史専攻の大学生や大学院生をはじめ、すでに展覧会もみて関心をもった一般の人たちも多かったようで、年齢層もさまざま、そして専門研究者や出版関係者の方々の姿もあり、みなさんが熟心に耳をかたむけられ最後の質疑応答にも積極的に加わっていただいた。なお、招致研究者は来日した翌日には京都に移動し、3月24日(水)午後6時から二冬の在京都イタリア文化会館において開催された講涼会「ローマ帝国と属J‘卜1レプティス・マグナ:ローマ帝国と地中海域へのその影翠嬰」で、東京と同じく“レプティス・マグナ”について講演している。講演後には来聴した古代学協会々員や関西圏の考古学、ギリシア・ローマ美術史、建築史などを専攻する学生や若手研究者たちとの交歓が遅くまでつづいたと聞いている。レプティス・マグナの発掘調査および研究をこれからも継続していくというムッソ教授からは今後も新しい発見や調査報告が期待され、また教授自身は今回の招致で日本の研究者諸氏と意見交換ができたことを喜び、日本における西洋文明の発祥の地である地中海域への関心の高まりとその研究活動が今後よりいっそう広範囲に向けられるであろうという感触を得ることができた有意義な機会であったと述べていた。27日のシンポジウムでは、これら2題の基調講演後に、ラ・ロッカ氏の“トラヤヌ-583 --

元のページ  ../index.html#594

このブックを見る