は吹き付けておけば、4■13カ月の間に殺菌し、ブラシで擦らずに地衣体の除去が可能となった。これは、石材に着生した地衣類やらん藻類を、石材表面に損傷を与えずに除去できることを意味している。したがって、地衣成分を主剤とするこの防藻、防地衣剤は、碑文や浮彫りのある文化財石造物の保存対策に有効な手段を提供する。アンコール・ワットの北東塔には、かつて多数のコウモリが生息していた。この塔の石材劣化は著しく、微生物分析を実施すると硫黄酸化細菌が検出される。アンコール遺跡のその他の粉状劣化石材の試料からも該菌の生息が認められる。さらに、コウモリの排泄物の微生物分析からも、硫黄酸化細菌の存在が示唆された。したがって、石材の粉状劣化部位に生息する硫黄酸化細菌とコウモリの生息との間に関連のある可能性が存在している」おわりに英国・ノースアンブリア大学の美術品保存学科の主催する国際会議に招聘され、者らのアンコール遺跡で実施してきた石造建造物の生物被害と対策について発表する機会を得ることができた。本会議に参加して、美術品の保存・修復に復元の手法が広く用いられていることを認識した。しかし、これが文化財にまで広げられているかどうかは確認できなかった。本大学の美術品保存学科が、美術品の保存・修復の教育に積極的に機能している現状に接することができた。-586 -
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