鹿島美術研究 年報第22号別冊(2005)
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注CAHN, Isabell, “La chapelle de Trémalo en Nizon”, Ex. cat., Gauguin et le Chirist jaune, Pont-Aven:■ゴールドウォーター前掲書、7−8頁。■“primitivisme”, Trésor de la langue française, op.cit., p. 1196.■Ex.cat., Gauguin, par CAHN, Isabelle, FRECHES-THORY, Claire, Paris: Galeries nationales du Grand ウィリアム・ルービン、小林留美・長谷川祐子共訳「序―モダニズムにおけるプリミティヴィスム」、ウィリアム・ルービン編、日本語版監修吉田憲司、圀府寺司、小川勝、真島一郎『20世紀美術におけるプリミティヴィズム』淡交社、1995年、1−81頁。カーク・ヴァネドー、六人部昭典訳「ゴーガン」、ルービン編、同上書、178−209頁。ゴーギャンにおけるプリミティヴィスムの解釈については、拙稿「ゴーギャンとプリミティヴィスム試論」『滋賀県立近代美術館研究紀要』2004年、9−20頁。■“primitif”, Trésor de la langue française: Dictionnaire de la langue du XIXeet du XXesiècle(1789−1960), publie sous la direction de IMBS, Paul, Paris: Centre national de la recherche scientifique,Gallimard, 16vol., 1971−1994, tome 13, 1988, pp. 1193−1196. ロバート・ゴールドウォーター、日向あき子訳『二十世紀美術におけるプリミティヴィズム』岩崎美術社、1971年、44頁。またルネサンス以前のプリミティヴ美術の再評価の歴史と価値については、VENTURI, Lionello, Ilgusto dei primitivi, Torino: Giulio Einaudi editore s.p.a., 1972(Seconda edizione). PREVITARI,Giovanni, La fortuna dei primitive,Torino: Giulio Einaudi editore s.p.a.,1964. 「プリミティフ」の概念整理については日本大学教授の木村三郎先生の御教示を得た。■DAUCHOT, Fernand, “Le Christ jaune de Gauguin”, Gazette des Beaux-Arts, 1954, tome 44, pp. 65-68.■この作品を二重空間と捉える解釈については、宮下規久朗『バロック美術の成立』山川出版社、―91―Musée de Pont-Aven, 2000, pp.8−12.Palais, 1989, pp. 165−167.ゴーギャンは「私の版画が面白いのは版画のプリミティヴな時代に立ち戻っているからさ」と、また「そのうち一定の時になったら、現代の版画とは全く趣の違う私の木版画にきっと値打ちがでてくると思う」と述べているが(注14)、過去への遡及すなわちプリミティヴィスムは彼にとって新たな価値を探る手段であったのである。しかしゴーギャンにとってのプリミティヴィスムはプリミティフ美術に倣うことだけでは事足りなかった。自身の過去をたどって、出自と関係のあるペルーの陶芸に触発されたり、また3度目のブルターニュ滞在の後に旅立ったオセアニアでは、ヨーロッパから失われてしまった文明が保存されていることを期待していた。パリからブルターニュという地に移ることが過去への旅であったことと同じく、オセアニアやアジア、アメリカへの憧憬は始原への追慕となった。そしてそれらが絡み合うことで、過去と現在、現実空間と心象風景が複雑に折り重なって象徴をなす、ゴーギャンの作品に結実していったのである。39−40頁を参照した。

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