―257―cには主題の問題と最も関わりの深い、画の描写内容やそこから詩人が抱いたイメ唐代山水画について根本から考えたいと思うとき、全ての詩から関係するものを採録して、研究の基礎としたいと思うのは自然な欲求であろう。筆者も常々その必要性を感じてきたが、現存する唐詩は清前期に編纂された最大の総集である『全唐詩』(1707年)によれば約4万9千首を数え、時間の制約からこれまで果たせずにいた。今回、助成を受けたのを機に、唐代山水画の主題研究の一環としてその通読に取り組んだ。調査の結果、改めて驚かされたのは絵画に関する詩が予想以上に多かったことである。山水画に関するものだけでも百数十に上り(注2)、画史類に記された唐代絵画の盛行ぶりが誇張でないことを実感することとなった。これらを山水画の主題の考察に当てるために、一覧表として整理を試みたのが〔表1〕「『全唐詩』にみえる山水画関係詩(抄)」である。議論の都合上、まずこの表の記載方法を述べておく。2『全唐詩』にみえる山水画関係詩採録の詩は筆者が把握した山水画関係詩の全てではなく、紙数の範囲内で重要度の高いものを優先に選択した。また、『全唐詩』には五代詩も一部収録されており山水画関係の詩も見受けられるが、それらも今回は割愛した。底本に用いたのは中華書局出版の排印本(全25冊)である。詩の掲載の順序はこの巻次に従っている(注3)。詩人の大体の活躍年代を、初唐、盛唐、中唐、晩唐の4期に分けて記したが、若干の出入りが生じているのは『全唐詩』の配列に基づくためである。詩題については、長文のものもなるべく省略しないよう心掛けたが、スペースの都合上割注を省略したものがある。画題と形状を一つの項にまとめた。これは、実際の記述の現れ方として「山水障」、「壁画山水」などのように画題と画面形式が連続して一つの語のようになる例が多いためである。原則的に詩の記述をそのまま抜き出し、内容から判断できる場合には[]を用いて表記した。詩中の情報の項は、主題考察の目的と、資料としての活用の便を考慮して、aからdまでの四つの区分を設けた。aには作者が分かる場合にこれを記した。bには着色や水墨、粉壁や絹素などの素材に関する内容をまとめた。丹青のような一般的な用語も、水墨との用例の使い分けの可能性を考慮して記載した。素材とその描写対象が一緒に語られている場合、描写対象も含めて記している。
元のページ ../index.html#266