―258―(注4)。これによって、個々の詩がどれだけ古いテキストに遡れるかを知ることがでージを記載した。一般に詩に詠じられた場合、画中の描写やモチーフはそのままに記述されるのではなく、詩人のイメージによって様々な広がりが与えられる。題画詩を絵画資料として扱う際の最も難しい点である。当初は客観的叙述と詩におけるイメージを判別して扱おうとも思った。しかし、実際に始めてみると厳密な線引きは困難で、むしろ個人的な見解で分別するのではなく、原文に従って単語や詩句を列記していく方が、結果的に唐の詩人が捉えた山水画の総体を、把握しやすいのではないかと考えるにいたった。やや読みづらく思われるかも知れないが、詩句を通覧していくことで、唐代山水画のイメージを形成する手がかりが得られるのではないかと思う。dには画を鑑賞した結果として詩人が抱いた感想や思考(例えば隠遁の願望など)、および制作環境や鑑賞の状況といった情報を記入した。末尾の「他のテキスト」の項は、『全唐詩』が清代編纂の総集という性格上、本来はより信頼性の高いテキストを用いる必要があることから設けたものである。『全唐詩』収録の各詩が、他にどのようなテキストに収められているのかを示した書に、平岡武夫編『唐代の詩篇』全2冊(京都大学人文科学研究所、1964、1965年)がある。本表では同書に示されたテキストの中から信頼性、普及性を考慮して一つを選択したきる。以上、表作成によって得られた情報に基づき、議論を進めることとする。なかでも、この時代に特徴的な主題と目される神仙山水と樹石画の二画題を中心に検討することとし、それ以外の主題については末尾で触れることとする。3神仙山水について神仙の住みかである仙境を描く神仙山水は、古代の神仙思想やその影響を受けて成立した道教信仰を背景に東晋〜南北朝の山水画成立期より制作された。唐代は、王朝が老子を祖とあがめたこともあって道教が栄えた時代であり、神仙山水もその影響により流行したと考えられる。後世には復古的な青緑山水として描かれることが多く、李思訓などの名を冠したものも見受けられ、その淵源としても注目される。唐代山水画の描写内容に対する画史類の記述不足は、神仙山水も例外ではない。けれども、唐詩には山水画の描写を仙境として詠うものが多数見られ、その盛行ぶりをうかがわせる(no.2, 11, 12, 13, 15, 17, 18, 21, 23, 24, 25, 28, 30, 32, 45, 56, 58, 62, 68, 75など)。初唐から盛唐に多く、中唐以降は次第に減少する。詠われる仙境としては、東海にあり鼇(大亀)が背負うと伝えられる蓬莱、方壺、瀛州の諸山(no.2, 11, 12,
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