鹿島美術研究 年報第22号別冊(2005)
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注能と伊勢物語絵との関係について、伊藤正義氏は23段の筒井筒が、能《井筒》の詞章、と能舞台上のイメージが伊勢物語絵に反映しているとされる。(「伊勢物語絵―《井筒》の場合」『伊勢物語と能』国立能楽堂2001年特別展示図録,28〜29頁) 新日本古典文学大系17『竹取物語 伊勢物語』岩波書店,1997年■伊藤敏子『伊勢物語絵』(角川書店,1984年)および千野香織『日本の美術301伊勢物語絵』■主要作品に、大英図書館蔵「伊勢物語図会」3帖(以下、大英本と呼ぶ。絵巻を帖に改装)、小野家蔵「伊勢物語絵巻」3巻、ニューヨーク・パブリック・ライブラリー蔵(スペンサー・コレクション)「伊勢物語絵巻」3巻、チェスター・ビーティー・ライブラリー蔵「伊勢物語」3冊(以下、チェスター本と呼ぶ)等がある。■嵯峨本に先行する図様を川崎博氏は大英図書館系統とチェスター本系統の二つに大別され、嵯峨本49図のうち、28図が大英本系、18図がチェスター本系からとったと指摘された。(「研究資料 嵯峨本『伊勢物語』の挿絵作者について」『國華』第1258号,2000年,27〜28頁)■久下裕利「嵯峨本伊勢物語の挿絵を読む」『源氏物語絵巻を読む―物語絵の視界』笠間書院,■前掲注■伊藤氏『伊勢物語絵』に所収。■『小町集』114、『太平記』巻第十三北山殿謀叛事の段などに見られる。(『新編国歌大観』1〜田代慶一郎「謡曲『松風』について(上)」『比較文学研究』48,1985年,63頁室町時代から江戸時代初期にかけて〈熊野〉と併称されて上演されているという。鳥居フミ子日本古典文学大系40『謡曲集上』,岩波書店,1960年『在外奈良絵本』,角川書店,1981年「三井寺絵巻」考―能の絵巻・絵本の史料性」『中世劇文学の研究 能と幸若舞曲』三弥井書「「すみた川さうし」絵巻を読む」前掲注小林氏『中世劇文学の研究 能と幸若舞曲』前掲注に所収。王舍城美術寳物館『開館十周年記念刊行 館蔵選』,1991年伊藤正義先生古稀記念古典研究資料集『磯馴帖松風篇』(和泉書院,2002年)所収。小林健二 「能の絵巻と絵本」前掲注小林氏『中世劇文学の研究 能と幸若舞曲』■『伊勢物語』とその注釈書、『古今和歌集』とその注釈書で3本に過ぎないという。佐藤(神―284―が深く関わってはいないことがかえって両者の交流を促したと推察される。共通する一首の和歌が『伊勢物語』と能を結び、そのイメージが伊勢物語絵へと再び立ち戻ってくる。そこには、和歌の本歌取りの手法にも似たイメージの堆積と新生がある。119段の絵画は、『伊勢物語』をめぐる豊饒なる享受の結実といえよう。(至文堂,1991年)に主要な伊勢物語絵が網羅される。「近世演劇における松風物の展開と変質」『國語と國文學』第64巻第1号,1987年,6頁店,2001年氏の解題が備わる。1996年,224〜231頁10巻,角川書店,1983〜1992年・中村薫『典拠検索名歌事典』明治書院,1936年)能では、〈柏崎〉、〈班女〉、〈清経〉に「形見こそ」の和歌が形をかえ用いられる。(佐成謙太郎「謡曲引歌考」『謡曲大観』首巻,明治書院,1936年。)

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