鹿島美術研究 年報第22号別冊(2005)
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?神原泰 研究―376―――その同時代西欧美術受容者としての側面を主に――研 究 者:大原美術館 主任学芸員 プログラム・コーディネーター  1 神原泰 文庫本研究は、神原泰研究の重要な基礎資料である大原美術館所蔵の神原泰文庫(以後、【文庫】は、神原自身より大原美術館に寄贈され、1990年5月にその目録(以後、内容は、大別してピカソ(Pablo Picasso)関連、そして未来派関連の2群となるが、神原が1910年代から寄贈時点に至るまで収集した書籍、チラシ、リーフレット、ポスターを含む貴重な資料群である。このうちピカソ関連資料は、もともと神原が収集した資料に加え、大原美術館への寄贈にあたり、さらに数年をかけて補完された網羅的な資料群である。一方の未来派関連資料は、1920年代初頭以来イタリアのマリネッティ(F. T. Marinetti)との直接的な交友によってもたらされた資料であり、イタリア未来派が出した各種の宣言書など核として、さらにヨーロッパ各地の未来派運動に関わる貴重な一次資料を多数含むものである。【目録】を一読すればただちに了解できるように、【文庫】は収集のみならず、その分類や各文献への解題的な補注の記載に至るまで神原の意思が行き渡ったものである。【目録】巻頭には、神原自身が「大原美術館神原泰文庫について」というテキストを寄せ、この文庫の成立を、特に昭和戦前期において、その資料がいかに神原達に影響を与えたのかに重きを置きながら述べている。分類についても、基本的に神原による分類を基にし、その判断基準や、各文献の意義についての神原の手になる周到なテキストが添えられている。また目録部分においても、著者についての解説、刊行時における影響、当該文献の希少度、また再販や廉価版が刊行された場合の事情や、そのどの版が【文庫】に収められているかなど、神原の手になる実に多岐に及ぶ注釈が記されている。当然、そうしたテキストそのものが神原の芸術観をうかがい知るための重要資料であり今後もその検討を続けたい。しかし本研究の初めに着手した作業は、この【目録】に反映されていない【文庫】が持つ情報である。【文庫】)の調査を基点とした。【目録】)が刊行されている。柳 沢 秀 行

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